視聴者に向けてUUUM(ウーム)の退所を報告する動画を上げるユーチューバーが後を絶たない。
この傾向は昨年からずっと続いており、これで実に20人以上のユーチューバーがUUUMと袂を分かったことになる。なかでも、登録者数で日本5位を記録した「木下ゆうか」や「すしらーめんりく」「関根理沙」「プリンセス姫スイートTV」ら、登録者数が100万人を超える大物ユーチューバーが続々と脱退していることは、同社にとって手痛いところだ。
そして、6月に入っても4組のユーチューバーが同社を退所している。追い打ちをかけるかのように、今年は株価の暴落も経験するなど、YouTube界を席巻してきた同社に明らかに異変が起きているのだ。
その実情を、元UUUM従業員が明かす。
「もともとUUUMは、代表の鎌田和樹が陣頭指揮をとって急成長してきたベンチャーです。良くも悪くもワンマンな部分があり、社員の入れ替わりも激しかった。そして、ヒカキンとはじめしゃちょーというアンタッチャブルなユーチューバーの2人が存在しており、社員も彼らには誰も意見ができません。ほかのユーチューバーとは、待遇や社内での扱いに天と地ほどの差がありました。社内的な統制が取れていたとは言いがたく、このような事態に陥るだろうことは目に見えていましたね」
ユーチューバーはもともと、個人で活動していたケースが多い。そんななかで突然、一部上場企業に所属し管理される立場になるのだから、ギャップも生じやすい。先出の元従業員が続ける。
「特に機能していなかったのが、マネジメントと広報部門です。UUUMの社員は転職組が多く、芸能事務所から転職するケースも珍しくありません。彼らに期待されていたのは、クリエイターのマネジメントです。しかし、芸能事務所とUUUMでは本質的に業務内容の理解が異なります。芸能事務所の場合、テレビ局やメディアとの交渉、あえてタレントに厳しく当たって飴と鞭を使い分けるなど、タレントと事務所の絶妙なバランスのもとで成り立っています。ところがUUUMの場合、ユーチューバーたちは会社の意向に従っても収入は変わりませんし、メリットが少ないわけです。そのため、芸能事務所のマネジメントのやり方は彼らには当てはめられません。つまり、芸能事務所と異なりクリエイターと会社のパワーバランスがクリエイターのほうが強く、それをコントロールできないことにより退所が目立っているという見方もできます。そして、広報に関しても好意的な記事はともかく、そうではないメディアへの対応のまずさが随所に出る場面が増えるなど、ボロが出はじめていました」
UUUMを退所したユーチューバーたちは、その大半が“円満退所”を強調している。業界の収益構造としては、YouTube側から受領する「アドセンス収益」が主となる。その中でUUUMからユーチューバーへ支払われる配分は80%程度だという。ネット上では、クリエイターたちが続々と退所しているのは、この20%の“中抜き”が原因ではないか、と推測する声もあるが、あるユーチューバーは、本質的な理由は別にあると指摘する。
「もちろん、このマネジメント料の20%というのも要因のひとつではあるでしょう。しかし、すべてではありません。結局は、この20%に見合う価値をクリエイターが見いだせなかったということでしょう。たとえば、営業で動画制作以外の仕事をとってきたり、タイアップなどの案件が会社から振られるなど、芸能事務所のように所属するメリットがあれば、これだけ辞めることはないはずです。特に登録者数が多いユーチューバーにとっては、なおさらです。まだ登録者数が多くない駆け出しのユーチューバーにとっては、登録者数を増やすという意味でUUUMに所属するメリットはありますが、人気が出てきたら鞍替えしたくなる気持ちは理解できます」