旅行、「人がいない場所に一人旅」がトレンドに…従来の「誰かと一緒に観光地」と真逆

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「Getty Images」より

 新型コロナウイルスの蔓延により、国や都道府県は3月半ばから外出自粛を要請。それでも、4月前半は首都圏から近郊の観光地へと日帰りで旅行に出かける人たちは少なくなかった。特に人気を博したのが、静岡県の熱海と栃木県の日光だ。両都市とも近年は外国人観光客が溢れ、のんびりと旅行することが難しくなっていた。3月半ばには外国人観光客が一斉にいなくなる。観光産業は壊滅的な危機に瀕したが、日本人旅行者にとって穴場と化した。

 その後、緊急事態宣言により東京の繁華街からは人出がなくなり、自粛警察の活躍も相まって、にぎわいは消え失せた。長距離移動の需要も激減。東海道新幹線をはじめ地方に向かう鉄道、高速バス、航空機の利用者は前年同月比で大幅な減少となった。地域・路線にもよるが、95パーセント以上も利用者が減少した地域・路線もあり、経営破綻寸前にまで追い込まれている交通事業者もある。

 そんな壊滅的な状況でありながら、観光業界には一縷の望みがあった。それが、自民党を中心に提唱されていた観光需要喚起政策「Go Toキャンペーン」だ。コロナ収束後に約1.7兆円の予算を投じて観光業界の再興を目指そうというもの。

「緊急事態宣言の期間が2週間の我慢で済むなら、『Go Toキャンペーン』は業界にとってありがたい話だ」(観光業界関係者)

 しかし、緊急事態宣言は期日を延長され、全国で解除されるまで約1カ月半を要した。そして解除されてもコロナ禍が収束したわけではない。今後はコロナ対策を講じながら停滞していた経済活動を上昇気流に乗せるという困難が待ち受けている。多くの事業者から「補償がないままの休業要請で限界」という声が漏れ、期間中に廃業した企業は数え切れない。ある地方自治体の商工観光課の職員は、こう話す。

「行政は飲食店にテイクアウトや出前などに取り組むことで、少しでも売上を確保するように促していますが、そう簡単な話ではありません。持ち帰り用の容器を用意しなければなりませんが、これまでテイクアウトなどをやっていなかった飲食店が容器を用意するのは簡単ではありません。業者に頼まなければなりませんし、そもそもこのご時世で取引実績のなかった飲食店からテイクアウト用の容器を納入してほしいと注文を受けても、応じる業者はないでしょう」

 それでも店内飲食が厳しい情勢にある昨今、飲食店はテイクアウトに活路を見いだして生き残ろうと必死だ。

観光産業のトレンドは “孤”

 前出の観光業界関係者は、こうも話す。

「観光産業は壊滅的な状況に陥りました。すぐに需要は回復しないという予測も強かったのですが、意外にも外出・行楽の潜在需要は高いのではないかという見方が業界内では強くなっています。それでも、都道府県境をまたいだ移動には抵抗感も強く、また県外ナンバーを排除する機運も高まっていたこともあり、遠出を控える傾向は続くでしょう。そのため、4月前半の熱海日光が賑わったときと同様に安く・近く・短いの“安近短”の旅行需要が拡大すると見ています。今から業界は知恵を絞っています」

 さらに、緊急事態宣言後の新しい潮流として注目されている観光産業のトレンドが “孤”だ。これまでの旅行は、仲間や家族や恋人と一緒に行くのが定番だったが、最近は一人旅も一般的になりつつあり、そうした需要を取り込もうとする商品の開発も始まっている。しかし、一人旅といえども、人出の多いメジャー観光地に旅行者が足を運べば“密”になる可能性もある。

 そこで、密を避けて人里離れた場所に行く旅が注目されている。例えば、家から自動車に乗って田舎の海に行き一人で釣りを楽しむ、山奥の無名絶景スポットに行って地元の郷土食をテイクアウトで食べる、インスタ映えを狙うといった具合だ。