世の中、もちろんおいしい話ばかりではありません。デメリットとしては、金融関連の情報が銀行系、サラ金系、クレジットカード系のブラックリストに登録されます。名前と生年月日で、2社は5年、銀行系は7年間といわれています。
普通預金の取引は問題ないですが、一切の信用供与は受けられません。つまりクレジットカードもローンも無理です。そのほかに、会社は辞める必要はありませんが、自己破産から復権するまでの期間は資格制限があります。主に士業と呼ばれる専門的な職種や会社役員も対象です。通常であれば期間は3カ月から半年くらいが目安です。ほかにも、手続き中の海外渡航、長期の旅行、引っ越しは裁判所の許可が必要です。考えようですが、普通の生活ならば支障なく続けられます。
実際に手続きをすると、前述のとおりデメリットに耐えなければなりません。具体的な対処方法として、もし可能なら次の予備対策をお勧めします。
まず新しい携帯電話です。手続きをすると分割払いができません。名義は本人でも家族でもかまいません。新しい人生のためには必須です。次に困るのがクレジットカードを持てなくなることです。現代社会ではカードがなければ出張予約やネット購入時の不便は測りしれません。ですからご本人の年令にもよりますが、ご両親やパートナー名義カードの家族メンバーとして、先に1枚発行を済ませておきます。家族カードは破産者でも持てます。
また、現金は限られますので、もし高価な時計、ブランドバッグ等があれば、申し立ての弁護士に相談して、先に家族宛に売却して手元に残します。これは、どうしても必要な際に質屋で現金を借り入れる質草になります。金利はとても高いですが、金に換えられない突発時、例えば入院とか親戚の不幸等の非常事態の際に役立ちます。皮肉なもので、一銭もない時に限ってこのような場面に接する事態が起こります。人生にはどうしようもない時期が続いて起こるものです。破産は本当に「お金」のありがたみを学ばせてくれます。
まずは個人破産の流れと、事前にやっておきたい事柄を説明しました。次回は手続きの具体的準備内容と、弁護士が債権者に受任通知を送付した直後に人間関係が大激変することを経験談を交えてお伝えします。
そして人生再建に向けたマインドセットが必要です。なぜなら人生最大の想像以上の「心の折れ」を経験します。必ず自殺が浮かびます。それらを乗り越える具体的方法や考え方をお伝えします。
繰り返しますが、破産は人生再建の選択肢のひとつにすぎません。私もこうして普通の生活を取り戻し、子供も社会人となりました。誰にでも人生再建は必ずできます。次回連載も続けてお読みください。
(文=辛酸なめ過ぎ太/人生再建アドバイザー)