高輪ゲートウェイ駅でJR東日本が挑む“初の試み”…再開発エリアの“名称問題”も

高輪ゲートウエイ駅(「Wikipedia」より/江戸村のとくぞう)

 3月14日、JR山手線とJR京浜東北線に高輪ゲートウェイ駅が開業した。山手線としては1971年に開業した西日暮里駅以来、49年ぶり。京浜東北線としても2000年に開業したさいたま新都心駅以来、20年ぶりの新駅となる。駅前で半年間にわたって開催される予定だった開業記念イベント「Takanawa Gateway Fest」は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となってしまったが、開業初日は、新しい駅を一目見ようと、多くの人でにぎわった。

 高輪ゲートウェイ駅の周辺は、かつてJR東日本の車両基地だった。上野東京ラインの開業により首都圏各路線の線路がつながったことで車両基地の再編が可能となり、そこで生まれた約13ヘクタールの広大な敷地を、「グローバルゲートウェイ品川」をコンセプトとする国際交流拠点へと再開発しようという大プロジェクトが進行している。新しい街の玄関口として整備されたのがこの駅だ。

 今後、1街区から4街区まで4つの超高層ビルと文化創造施設などが整備されることになっているが、まちびらきは4年後の2024年を予定しており、しばらくは工事現場に囲まれ何もない状況が続く。駅前は東京オリンピック開催時にパブリックビューイング会場「東京2020ライブサイト」として使われる予定だ。

 今回はあくまでも暫定開業という位置づけであり、開業時の乗車人員は、山手線の駅では最低となる約2万人程度を想定しているが、第一期開発区域の整備が完了する2032年頃には約13万人まで増加する見込みだ。

 特筆すべきは、この高輪ゲートウェイ駅周辺のまちづくりを担うのがJR東日本ということ。これは同社が初めて手掛けるまちづくりでもある。コンセプトの「グローバルゲートウェイ」とは、京急線で羽田空港に直結するとともに、2027年に開業予定のリニア中央新幹線や東海道新幹線などと乗り換えが可能な品川を、日本各地そして世界につながるゲートウェイ(出入口、結節点)として位置づけ、世界中から先進的な企業と人材が集い、多様な交流から新しい価値が生まれる国際交流拠点を形成しようというものだ。

 そのために新たな街には、MICE施設(企業や国際機関の会議、展示会、イベントなどに使用する施設)など文化・ビジネスの創造に向けた育成・交流・発信機能と、外国人のニーズにも対応した、多様な居住滞在機能を整備。また、広場や歩行者ネットワークを南北方向に連続して整備することで、駅と街全体を一体的につなぐ交流空間を創出する計画だ。

まちづくりが成功するかどうかの指標

 高輪ゲートウェイという駅名は、グローバルゲートウェイ品川というコンセプトから導き出されたものであるが、この駅名が決定するまでにはひと悶着があったことも記憶に新しい。

 新駅設置にあたりJR東日本は駅名を公募し、約6万4000件の応募があった。応募の数でみれば1位は高輪、2位は芝浦、3位は芝浜だったが、130位(36件)の高輪ゲートウェイが選ばれたことに異論が噴出。駅名決定の撤回を求める署名が行われるまでに至った。

 JR東日本からすれば、元より投票数で決定するとは言っておらず、あくまで公募された案の中から選定するという立て付けだった。コンセプトである「ゲートウェイ」と、公募で1位だった「高輪」をあわせた「高輪ゲートウェイ」は、JRの狙いからすれば「最適解」となるはずだったが、山手線の駅としては突飛な名前に違和感があったのだろう。

 ただ、もともと車両基地で、これから開発が行われる新しい土地にふさわしい駅名の選定はなかなか難しいのが実情だ。開発エリアは住所でいえば港区港南にあたるが、これは品川駅の「港南口」にも使われているように、品川駅東口のイメージが強い地名であり、混乱を招く。公募で1位となった高輪は、品川駅西口から白金高輪駅にわたる地名であり、品川駅の「高輪口」にも使われているだけにわかりにくい。公募2位の芝浦は田町駅東口から浜松町にかけて広がる地名で、開発エリアと一致していない。