メルカリとドコモ、ポイント相互利用は最強?ドコモが狙う“メルカリ丸呑み”構想

ドコモとメルカリ スマホ決済で提携(写真:つのだよしお/アフロ)

 キャッシュレスのスマホ決済業界の本格的再編が加速する。

 メルカリと同社傘下のメルペイ、NTTドコモは業務提携を発表。5月にも両社の持つ会員アカウントを連携させる。ドコモの共通ポイント「dポイント」は約7300万人の会員を持つ。月間1450万人が利用するフリマアプリ「メルカリ」で商品を購入する際に、dポイントをためることができる。たまったdポイントはメルカリでの買い物に使える。

 NTTドコモ、メルカリのスマホ決済では残高を相互に利用できる。ドコモの「d払い」とメルカリが手掛けるメルペイの加盟店を共通化し、営業活動も両社で共同して行う。18年4月にドコモが投入した「d払い」は20年1月に利用者数が2200万人を突破し、19年同時期の約2倍に拡大した。決済可能な店舗やサイトも136万カ所に達する。

 一方、メルペイは19年2月にサービスを開始し、利用者数は600万人。決済可能な店舗やサイトはd払いを上回る170万カ所だ。両社の提携は、事実上のスマホ決済サービスの統合である。

メルカリはオリガミを買収

 キャッシュレス決済はIT大手の合従連衡が進む。スマホ決済市場で断トツの首位を目指すソフトバンクグループ(SBG)傘下のZホールディングス(ZHD)は19年11月、LINEペイを展開するLINEと経営統合することで合意した。米国、中国の巨大IT企業に対抗するため統合を決めた。SBGのPayPay(ペイペイ)とLINEペイのスマホ決済2強の事業統合で、PayPayの一強体制がさらに強まることになる。

 離合集散が相次ぐなか、スマホ決済の草分けといえるベンチャーが姿を消した。オレンジ色に折り紙のマークが目印のスマホ決済「Origami Pay(オリガミペイ)」は決済手段としての参入はどこよりも早かった。だが、各社の大型還元キャンペーンに呑み込まれた。18年12月期は売上高2億円、営業損益が25億円の赤字だった。「このままいくと資金ショートが時間の問題」(関係者)だった。

 メルカリは2月、傘下のメルペイを通してオリガミの全株式を取得した。投資会社や出資企業など持っていた株式を1株当たり1円相当となる260万円程度で買い取った。オリガミはスマホ決済のスタートアップ企業として注目を集め、一時期、企業価値は417億円と評価されたこともあったが、スマホ決済の乱売合戦に巻き込まれ、あっけなく失速した。

 メルカリはオリガミを取り込み、スマホ決済の強化を図る。オリガミの強みであった地方の信用金庫との連携を深める。

メルカリがドコモと提携するのはPayPayに対抗する狙い

 メルカリがNTTドコモと提携する狙いは何か。スマホ決済市場で一強体制を築きつつあるPayPayに対抗する狙いがあることはいうまでもない。

 メルカリはスマホ決済の大型還元合戦で、赤字が膨らんでいる。2019年7~12月期の連結決算は、売上高は前年同期比39%増の329億円、営業損益は139億円の赤字(前年同期は36億円の赤字)、最終損益は141億円の赤字(同44億円の赤字)だった。20年6月期(本決算)の業績予想は公表していない。

 メルカリは国内フリマアプリ事業で稼いだ利益を元手に、米国でのフリマアプリ事業と国内のスマホ決済事業に先行投資を続けてきた。だが、米国事業の今期中の黒字化の達成は難しい。「勝負の年」としてきたが、好転の兆しは見えない。

 メルカリは、スマホ決済のメルペイを19年2月に開始して以来、大幅に業績が悪化した。19年7~12月期の営業赤字139億円は前年同期(36億円の赤字)に比べて赤字額が約4倍となった。メルカリはスマホ決済単独での損益を開示していない。ただ、同時期に国内フリマアプリ事業の営業利益は増加しており、赤字額が急拡大した主因はメルペイだといえる。