賃貸物件の場合、入居者の年収と家賃は比例する。おおよそ年収の25%が家賃に消えている。これはかなり高い数値で、こんな支払いをしていたら、貯金などできるはずもない。
東京都の居住者の生涯年収は1人2.5億円ほどになる。この生涯年収の25%が住居費と考えると、1人約6000万円になる。居住期間を70年とすると、月の平均支払額は約7.4万円になる。この毎月の支払いをなんとかして削減しないことには、東京の生活は成り立たない。
ここでは、結婚などは想定していない。なぜなら、東京都で50歳までに結婚しない人の割合は、男33%、女28%に達するものと予想される。残り7割の人は一度は結婚するわけだが、結婚しても、その後に離婚してしまうことが少なくない。実際、結婚した人の35%は離婚している。この結果、2人に1人が老後を単身で迎えることになる。
最近、「ねんきん定期便」で自分の年金支給額がわかるようになった。その65歳以降の支給額を見てみよう。年金支給額は現在の高齢者は多いが、年齢が若いほどもらえない。年金が少ないと賃貸入居も断られる始末になる。
まず、家賃は最大の無駄な出費だという認識を持っていただきたい。学校を卒業して仕事をするようになってから亡くなるまで約70年ある。住宅ローンは最長35年なので、支払い負担期間は2倍になる。住宅ローンは借入額の毎年3%程度を返済する。マンションの家賃相当額は物件価格の4%なので、ローン返済のほうが安く済む。年間家賃4%を25年払えば、その物件価格となり、手に入れることができるということだ。
単身向きなら、4000万円も出せば立派な家が買える。それを家賃として6000万円も払うのは、2000万円の無駄でしかない。これらのことから、家賃を払うよりも住宅ローンを返済したほうがいい。
このようになるのは、金利と税制の違いによる。住宅ローンはほぼゼロ金利なのに対して、不動産投資の金利は高い。また、税制は投資の場合には賃料収入に税金がかかって、手取りは7掛けくらいにしかならない。自宅は金利と税制で圧倒的に優位に政策誘導されているのだ。つまり、買うことをためらっている時間は無駄でしかない。
東京都は持ち家率が全国でもっとも低い。それでも85歳以上で75%あり、民間賃貸比率は10%に留まっている。数字から見て、東京都でも何か特別な事情がない限り、持ち家を取得することが常識になっているといってよい。
無駄な家賃の解決策はひとつしかない。これまで先人たちがやってきたように、自宅を持ち家として手に入れるのだ。そのためには、自分の年収がある程度あるときに、その信用を活用して自宅を買うしかない。
そのタイミングは早いほうがいい。住宅ローンを実質定年の65歳までに完済するためにも、遅くとも30歳までに家の購入を検討することを提案している。購入タイミングが遅れるほど、定年後のローン残高が多すぎて老後破産することになりかねない。
30歳では結婚も出産もまだかもしれない。結婚・出産と自宅購入をまったく分離して考えるのだ。それでも、自宅は結婚・出産の障害になることはない。資産性がある自宅選びができる限り、いつでも結婚はできる。それよりも、自分の老後は自分で設計しないと誰もやってはくれない。
まずは「賃貸から抜け出す」という強い意志を持つことである。また、「20代の間は借家住まいが当たり前」という感覚を捨てなければならない。「結婚して家族構成が決まって、上の子どもが小学校に上がる前に」などとグズグズ言っていたら、すぐに40歳ぐらいになってしまう。それでは遅い。