非常に便利なウーバーやウィーワークは、なぜ巨額赤字?儲からないシェアビジネスの罠

 フードデリバリーも急激に伸びています。車を運転していると、ウーバーイーツの自転車がとても危険な運転をしていて冷や汗をかくこともあります。先日は歩いているウーバーイーツのおじさんも見かけましたが、最近は配達料金が急速に下がっているようでますます拡大が予想されます。

 このウーバーイーツにも、競合が続々と出てきています。日本では老舗の出前館がCMを強化しています。海外では米シカゴのグラブハブは、競争激化や株価低迷から身売りを検討中であるとか、ジャスト・イートと合併するのではないかという報道も出ました。ほかにも、 ドアダッシュやポストメイトなど続々と競合が出てきています。

 このように過当競争になってきているため、米国のジュノは2019年11月に経営破綻し、ポストメイトは人員整理で業務を縮小中です。シンガポールのGrabもIPOを延期したようです。

 こうした過当競争の背景には、ビジネスモデルが単純で、参入障壁が低いので消耗戦になっていることがありますが、それを後押ししてきたのがベンチャーキャピタルなどのファンドや大手IT企業でしょう。

 日本ではソフトバンクと楽天が代表例です。すでに報道されているとおり、楽天はリフトに11%出資していますが、284億円の評価損を計上しています。ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)は10兆円ファンドとして有名ですが、13%を出資したウィーワークの企業価値は出資当時は470億ドルでしたが、現在はその6分の1の約80億ドルまで下がっているといわれています。

 このような投資家のネガティブな状況は、実はこの過当競争を是正する可能性があるとの声も出ています。つまり資金が続かなくなってきていて、むしろ勝ち組は価格の値上げを始めているとの報道も出始めています。実際リフトは値上げを始めているようですが、株価にはあまり反映されていません。一筋の光明でしょうか。

今後の対策

 では、シェアリングプラットフォームにかかわる企業は、今後どうすれば良いのでしょうか?

 あくまでも私見ですが、ひとつはファンドなどの投資家が慎重なバリューエーション、つまり企業価値評価を行うことでしょう。あまりにも過大評価していた空気は是正されつつありますが、世界的なカネ余り現象が続いており、しばらくすると同じことが起きてくる可能性もあります。

 そしてもうひとつは、ビジネスモデルを進化させることでしょう。つまりバックエンドビジネスをつくることだと思います。プラットフォーム戦略(R)におけるビジネスモデルで重要なことは、集客とマネタイズを同時に達成することです。そのためにはフロントエンドとバックエンドの2つのビジネスを構築することが重要です。コンサルティングの現場でもよく「プラットフォームは儲からない」というご相談を受けるのですが、多くの場合それはフロントだけでバックエンドモデルがない場合なのです。

 たとえば、楽天は楽天市場というフロントのプラットフォームを有していますが、実は儲かっているのは楽天カードなどの金融事業です。つまりバックエンドが金融なのです。マイクロソフトもWindowsOSというフロントのプラットフォームを有していますが、儲かっているのはMicrosoft Officeなどです。アマゾンもECのプラットフォームを有していますが、儲かっているのはクラウドサービスのAWSです。

 今後は過当競争が解消されていくかどうか、そしてバックエンドビジネス、すなわちオリジナル商品や自社固有の利益率の高いサービスの構築力こそが問われている時代になってくるでしょう。

(文=平野敦士カール/株式会社ネットストラテジー代表取締役社長)