乗車すると、目的地を伝えなくとも走り出します。すでに目的地はスマホで知らせているからです。目的地に着いたらそのまま降ります。支払いはすでにクレジットカードで終了しています。その後、ドライバーの評価をします。たまにあまり道に詳しくない人もいるので、そうした場合は少し厳しめの採点をします。態度が悪い人も同様です。しかしほとんどは素晴らしいドライバーです。それらをすべてスマホのアプリで行います。
こうした流れ一つをとっても、ウーバーが人気になったのは、単にタクシーを呼ぶためのサービスではないから、ということがわかるでしょう。マッチングだけでなく、そこでのドライバーと乗客との間のすべての取引をスマートフォンのアプリで記録し、GPSで位置情報を把握し、さらに決済まで行い、双方の評価を実施することで、双方への「信頼」を提供することに成功したからです。
いまや遊休不動産などで使用していないものがあれば、なんでもシェアリングサービスの俎上に載せることができます。使っていないモノや使わなくなったモノなどを他人とシェアすることで無駄のない世の中をつくることは、資源の有効活用としても注目を浴び、「所有」から「利用」へと時代の変化にマッチした新しいサービスのため急速に普及が進んでいます。
少し前にはアメリカで自宅のトイレを貸してくれる家を探せる「AirPnP」というサイトが話題になりましたし、日本でも店舗が休みの日に店舗の軒先を借りられる「軒先ドットコム」などが注目されています。使っていない服を貸し借りする「エアークローゼット」など、フリマなどのモノ、民泊などの場所のシェア、カーシェアなどの移動手段のシェア、家事などのスキルのシェア、クラウドファンディングなどの金のシェアなどがありますが、それこそ無限にビジネスアイデアは浮かびます。
あなたの家の中にも、使っていないゴルフバッグや服などがたくさんあるのではないでしょうか? それらもご近所さんとシェアすれば、立派なシェアリングエコノミーといえます。昔はご近所さんから醤油を借りたり、黒電話を借りたりすることは普通にありました。まだ日本が貧しく、みんなで助け合う“古き良き時代”だったのかもしれません。
仲介を行うプラットフォーマーはMatchmaker(マッチメイカー)として取引が成立したら手数料を得たり、参加者から参加料を得る、あるいはその組み合わせなどによって収益を上げるビジネスモデルです。
では、なぜシェアリングエコノミーのプラットフォームビジネスは儲からないのでしょうか?
そうした将来性のあるビジネスモデルであるシェアリングプラットフォームですが、ウーバーやリフトが上場を果たしたものの、株価がIPO時の株価から大幅に下落しています。それは収益性に疑問が生じているからです。その要因のひとつが過当競争です。
ライドシェアを例にとれば、ビジネスモデルとしては非常にシンプルで、乗りたい人と乗せて稼ぎたい人をマッチングするアプリを作成すれば、誰でも始めることができます。ビジネスモデルが非常に真似されやすいのです。さらに拙著では強調しているとおり、本当に儲かるのは、「フロント」と「バックエンド」のバックエンドビジネスのほうなのですが、それがないケースがほとんどだからです。実際ウーバーやリフトは熾烈な価格競争をしているため、赤字という状況に陥っています。
世界でも続々とライバルが登場しています。昨年、韓国最大メディアである朝鮮日報主催の「Future Finance Forum 2019」から小生が招待を受け、基調講演をしたのですが、そのときにスピーカーとして来ていたのがシンガポールのGrab(グラブ)の経営陣でした。彼らは「ライドシェアよりも決済などのフィンテックを強化している」と言っていました。ほかにも中国の滴滴(Didi)、米国のJuno(ジュノ)、インドのOla(オラ)などが続々と登場しています。