佃氏「ロッテ日本の社長の佃でございます」
武雄氏「どこにいるの、今?」
佃氏「私は東京におります」
武雄氏「東京に? 何をやっているの?」
佃氏「東京で社長をやらせて」
どことなくぎこちない会話ではある。
この後、やりとりは本題に入っていく。
武雄氏「あんた何年になるんだ?」
佃氏「6年になります」
武雄氏「ん?」
佃氏「6年でございます」
武雄氏「何年?」
佃氏「6年です」
武雄氏「今までね、僕はあなたのことを信用しておった」
佃氏「私も会長を尊敬しています」
武雄氏「こういう風にやっているのを見るとね、とんでもないと思った」
佃氏「しかし会長、それは」
武雄氏「言い訳するなというんだ! なぜこんなことやるんだ!」
佃氏「これは、誰もおらないから、まず私がやるようにというご指示でございました」
武雄氏「社長(筆者注:武雄氏のこと)が耄碌しているから何をやってもいいと思ったんだろ」
佃氏「そんなこと私はゆめゆめありません。もし会長がそんな風に思ったのなら」
武雄氏「もういいそれ。言い訳はいいから。ただ僕はあなたと喧嘩したくないの。だからとにかく今日を限りに辞めてちょうだい」
佃氏「わかりました。はい。わかりました。残念でございますが」
武雄氏「僕はあんたのその年齢とか、色んな前例からいっても信頼できると思った」
この後、いくつかのやりとりの後、佃氏は退室する。
武雄氏「あとはあんたの退職金もやりますから、黙って辞めなさいよ」
佃氏「はい」
武雄氏「いいです、それで」
佃氏「承知しました。長い間お世話になりました。ありがとうございました」
冒頭のようなぎこちなさはなくなり、武雄氏が決然とした態度で佃氏に対し解任を通告した様子が伝わってくる。
この5日後、武雄氏は昭夫氏をロッテホテル34階に呼び出した。やはり宏之氏も同席した。昭夫氏が入室すると怒号が飛んだ。
武雄氏「座れ!」
昭夫氏「はい」
武雄氏「バカ野郎!」
武雄氏は韓国ロッテが進めた中国事業における巨額損失を責め立てるなどした後、佃氏の処遇も含め昭夫氏をこう諭している。
武雄氏「とにかくね、昭夫、いいかい、お父さん言うけど、お前も変な考え持ったら、お前もすぐに辞めさせるからな」
昭夫氏「はい、ええ」
武雄氏「お前はロッテを全部、そういう才能を持ってない。わかっているから」
昭夫氏「わかっています。ええ」
武雄氏「お父さんのロッテグループをね、引っ張っていく人間の後任者が、外部のほうから、ん。お前に全部任してはできないわ」
昭夫氏「はい」
武雄氏「お前ひとりのためにロッテグループ全部を悪くするわけにはいかない」
昭夫氏「そうですね、はい」
武雄氏「弟のためだけじゃなくて当然ロッテグループ全体を考えてやる人じゃないとだめなんだ」
昭夫氏「ええ、そうですね」
武雄氏「それがお前、人を使っていろんなことをして。絶対に許さないよ」
昭夫氏「ええ、一応、佃さんについては先週お父さんからそういうあれがありましたので」
武雄氏「何?」
昭夫氏「佃社長についてはそういう話がありましたけれども、株主総会の1週間後で辞めさせるというのも、ちょっと対銀行とかで問題あるかなと思いまして」
そのように言う昭夫氏に対し武雄氏は念を押した。
武雄氏「お前そういう人間と一緒にやっているようじゃ、お前も辞めなくちゃならない」
昭夫氏「一応7月末か8月末くらいで佃氏は退任というふうに考えていたんですけれども」
最後、煮え切らない昭夫氏に対し武雄氏はこう強く言った。
武雄氏「いいね。俺が言ったこと」
昭夫氏「はい、大変誤解がありまして申し訳ありませんでした」
武雄氏「お前、俺が言ったこと覚えとけよ。お前また裏でやったらすぐにお前ほっぽり出すからな」