公取委は1月28日、楽天への調査を開始した。出店者側からも事情を聞き、出店者に一方的に送料負担を強いると判断した場合は、排除措置命令といった行政処分に踏み切るとみられている。楽天への調査は、強制権限がある審査官が実施する。楽天側は正当な理由がない限り、公取委の調査を断ることができない。
調査の結果次第だが、違反が確認されれば、違反行為をやめさせる排除措置命令などの処分を出すことになる模様だ。
三木谷氏は1月29日、出店者向けイベントで送料無料化について「これをしないと成長できない。ここが分水嶺だ。何がなんでも、皆さんと一緒に成功させたい」とイベントに出席した4000人の出店者に訴えた。三木谷氏の発言は、「公正取引委員会と対立しようとも送料無料化をやり遂げる」という決意の表明と受け止められた。
出店者からは「送料負担で赤字になる」「売上を楽天市場に依存しており、撤退は難しい」といった声が上がっているが、1月29日のイベントでは、三木谷氏との質疑応答の時間は設けられなかった。出席者の中からは「小規模店舗の切り捨てだ」との反発が強まっている。三木谷氏は同日、ツイッターを更新。「公取や行政のマスコミにリークをして、けん制をかけるやり方はあまりに時代錯誤でひどすぎる」と批判した。
「楽天のビジネスは、楽天ポイントで一つの経済圏をつくるやり方。客に楽天ポイントを貯めさせ、それを楽天市場で使ってもらう。楽天だけでぐるぐるとポイントとお金が回るかたち。その中で生きてきた」(ネット通販大手の役員)
だが、ここへきてスマホ決済がポイントと連携するようになった。
PayPayなどの攻勢で、スマホ決済でポイントが貯まっていく。そうなると、無理に楽天でポイントを貯めなくてもよくなる。楽天が築いてきた経済圏が崩れてしまうことへの焦りもあるのではないか」(同)
送料一律無料の見切り発車を決めたことで、楽天は墓穴を掘ることになるかもしれない。一方、4月から本格参入する携帯電話事業も不透明。「基地局の能力が低くて500メートル四方しか電波が飛ばない」(関係者)。料金体系も明らかになっておらず、楽天モバイルは当初、東名阪以外の地域はKDDI(au)の回線を借りる。回線利用料がかかるため「赤字覚悟でなければ低廉なプランを実現できない」(同)。
楽天の携帯事業は本当に本格営業を開始できるのか、大きな疑問符がついている。
(文=有森隆/ジャーナリスト)