一流大リーガーから用具の注文殺到、わずか5人のグローバル企業…カギは“オール埼玉”

 グローブも「使いやすくてデザイン性もいい」という声が高まり、ネット販売が伸びた。

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新開発した「武州和牛グローブ」。高価格(5万4000円+税など)だが、指先まで力が伝わるという

「商品カタログ」など管理費も見直した

 こうしたコラボレーション商品が開発できるのも、同社のブランド力が上がった証拠だ。倒産後の7年間を注目度で並べると、以下の流れとなっている。

・「防具をOEMから自社ブランドで訴求」→「MLB有名選手が愛用」→「ブランドの認知度が高まる」→「一般消費者の購入も増加」→「コラボ企画が次々に舞い込む」

 補足すると、倒産前の前身企業はOEM(相手先ブランドでの供給)だった。それを新会社は自社ブランドに切り替え、ブランド名が前面に出た。以前から愛用する有名選手もいたが、SNS発信なども手伝い、ブランド認知度が高まったのだ。さらにNPB有名選手や他競技の著名アスリートも愛用するAXFのネックレスも人気となった。

 ネット社会の進化を踏まえ、広告費用も見直した。前身企業では多額の経費をかけて商品カタログ(印刷物)を製作したが、新会社ではウェブ版中心。商品を並べた内容で画像撮影も社内で実施する。今や愛用者が自ら発信するSNSも、カタログ的役割を果たす。

「倒産前の会社では、企画と製造という両方の業務に携わっていました。その視点で業務を洗い出し、経費節減できる部分は抑えていったのです」(永井氏)

 筆者が最初に同氏を取材したのは12年前。前身企業の社員時代だ。交換した名刺の「生産・企画」という肩書に興味を持ったが、当時からミシンで防具製作もする職人でもあった。ネットを活用した管理面の見直しは、社員時代の冗費に対する違和感からだろう。

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埼玉県にあるベルガードの本社

韓国市場は7割減、グローバル展開のリスク

 一方でネット時代は、購入条件が整えば世界市場も相手にできる。ただし、リスクがある。

 もともとベルガードは、韓国市場に強かった。これも人脈からの展開で、韓国プロ野球選手が同社の防具を愛用し、韓国代表チームにも納品してきた。その流れで、同国の消費者が愛用し始めたのは、前述と同じ流れだ。

 だが、ご承知のように、日本と韓国の関係は悪化している。経営者の認識も同じで、1月7日付日本経済新聞記事によれば、「日韓関係の悪化が自社の事業に影響を与える」と考える経営者は、韓国側が47%、日本側が35%だった。

 現在、ベルガードの事業は「韓国市場は7割減」だという。幸い、総売り上げに占める韓国市場は大きくなかったが、カントリーリスクは、軌道に乗った活動への注意信号だ。大企業よりも小回りのきく中小企業こそ、「本当の顧客は誰か」を自問自答していきたい。

自社の最大の強みは「プレー中の身体を守る」

 これまで紹介したように、ベルガードにはコラボ商品のオファーも多く、それも知名度を高めてきた。前述したAXFのネックレスは累計販売数が約10万本。だが永井氏は、事業展開の再構築も考えている。

「当社の強みは野球用防具に代表されるように、プレー中の選手の身体を守る機能性です。実はサッカー選手のシンガード(レガース)もIFMC.(特許技術)を使い企画生産していますが、特徴を生かせる商品に注力したいと考えています」(永井氏)

 前述した復元力の強いグローブは、同社の強みそのものだ。イベントなどの際に試しに使ってもらうなど、価格に見合った価値の訴求も行っていく。

 また先日、永井氏は奈良県に出張した。目的は野球用スパイクの開発だ。これも縁あって知り合った企業との連携だという。

「『JCJAGUAR』(ジェイシージャガー)という自社ブランドを展開するジャガーズ創工さんと商品の共同開発を考えています。先方の強みと当社の強みを見据えつつ、今後細部を詰めていきます」(同)