今年「早慶上智・GMARCHが合格しやすい」は本当か…日東駒専へ志願者流れる

早稲田大学大隈講堂(「Wikipedia」より/Arabrity)

 2021年度大学入試から、センター試験に代わり実施される大学入学共通テスト(以下、共通テスト)。明治以来の教育の大転換とも謳われてきたが、改革の柱であった英語民間試験、国語・数学の記述式問題の導入は見送られることになった。新たな入試を見据えて勉強をしていた受験生は、さぞや混乱に見舞われているのではないだろうか。

 実情を、大手予備校「代々木ゼミナール」教育総合研究所教育情報企画推進室の川崎武司室長から聞いた。

「英語民間試験については、今の高校2年生が3年生になってから、4月から12月までに最大2回の試験を受けて、その結果が成績提供システムを介して、各大学に成績が送られる予定でした。このシステムの導入は見送られましたが、英語民間試験に向けた努力が無駄になるかといえば、そんなことはありません。

 国公立・私立大学ともに、英語民間試験を利用した入試はすでに行われています。英語民間試験の利用方法としては、大学が定める資格・スコアで出願資格を有するものや、基準の資格・スコアに応じて英語の得点を満点とみなす、あるいは得点換算や加点するなどの使い方をします。一般入試だけでなくAO・推薦入試に目を向けると、漢検など他の検定と同様、資格の1つとして願書に記入することもできます。」

 改革の先送りによる影響は少ないと見ていいのだろうか。

「生徒や保護者、高校教員は英語民間試験に備えて準備を進めていましたが、一方で、地域によって試験の受検機会が限られていました。現に、センター試験ですら受験のために長距離移動や宿泊を伴う人はたくさんいます。経済的な状況を含め、英語民間試験に対しての負担が大きくなる不安感については、一旦落ち着いたと感じます」

 そもそも、英語における資格・検定試験導入の目的はなんだったのだろうか。

「様々な社会変化でグローバル化が進み、国際的な見地から日本の英語教育を捉えた時に、コミュニケーション能力の向上が課題となっていました。言語によるコミュニケーションの場面では『読む』『聞く』『話す』『書く』が基本となりますが、日本の英語力は特に『話す』『書く』に課題があるという調査結果もあります。グローバル化時代を担う人材を育成する大学においても英語4技能の習得は重要であり、入試の段階でもその4技能を評価しようと考えたのが出発点です」

志望校から合格校の選択に

 近年、受験生の間には安全志向が広がっているといわれているが、改革の先送りはこれに拍車をかけたということはあるのだろうか。

「昨年の入試で早慶上智、GMARCHはすでに志願者が減っています。その要因の1つに定員厳格化があります」

 2014年度の時点で、私立大の入学者は総数で定員を約4万5000人超過しており、その8割が3大都市圏の私立大に集中していた。その一方で、定員割れをしている地方の私大が多かった。東京一極集中を避ける観点から、文科省は2016年度より入学定員を超過した私立大に対して補助金を交付しないという措置を取ることにしたのだ。

「2016年度入試から上位大学を含め、多くの私立大学で志願者が増加しはじめました。2017年、18年と年を追うごとに受験生1人当たりの出願数が増加し、加えて幅広い難易度の大学に出願する傾向になったと見ています。しかし、難関大学の合格がより厳しい状況となったことから2019年度入試において早慶上智、GMARCHの志願者が減少に転じました。

 幅広い難易度の大学に出願する一例として、GMARCH未満の大学には出願しないといった傾向から、日東駒専レベルの大学にも積極的に出願しているイメージです。2019年度入試では日東駒専レベルの大学はほぼ軒並み志願者が増加しています。