たとえば美容系のサイトなどの配信ネットワークのジャンルを指定できる場合には、広告効果も期待できます。また、また媒体側としてもアドネットワークに加入することで、あまりアクセスが多くない中小サイトでも手間をかけずに広告が掲載される可能性が出てきます。さらに、広告枠の売れ残りが減ることや広告に関するデータの実績管理のほか、広告の受注や掲載の手続き等も委託できるため、非常に多くのメリットがあります。
ただ、アドネットワーク事業者はすべての媒体情報を広告主に開示していない場合もあり、広告主としては自社のブランドにそぐわない、あるいはターゲットでないウェブサイトに掲載されてしまうという可能性もあります。このため、特定のウェブサイトには広告を掲載しない仕組みも導入されてきました。
そしてアドネットワークを使った広告では、多様な種類の広告や広告媒体が混在してしまうために、広告配信の効果を最適化する技術として、ユーザーがウェブサイトを利用したときに、ウェブブラウザ経由で送られるクッキーというデータをもとにユーザーの傾向を分析する「行動ターゲティング広告(BTA)」が普及してきました。
クッキーとは、ウェブサイトを見たときにウェブブラウザ側で作成される閲覧履歴ユーザー情報を保管する仕組みのことです。たとえばログインしたサイトに再度アクセスした際にログイン状態が保たれているのは、とても便利ですが、これはまさにクッキーを活用しているわけです。
「リターゲティング広告」は、一度自社のウェブサイトにアクセスしたユーザーに対して再度広告を配信する仕組みで、多くの企業で導入され実績をあげています。「リマーケティング」とも呼ばれています。
たとえば、自動車の販売サイトを閲覧したあとに、ほかのサイトを見たら、また自動車の広告が出ていることに驚いた経験があるのではないでしょうか。一度ウェブサイトに訪問したユーザーは、そのサイトに興味を持ったユーザーである可能性が高いので、再度広告を配信することは、非常に有効なターゲティング方法であり、実際にその有効性は証明されています。ただし、過度の露出はかえって反感を抱かれてしまう危険性も指摘されています。
リターゲティングの具体的な方法は、まず自社のサイトにリターゲティング用のタグを配置します。これによって、たとえばある商品のサイトにアクセスしてきたユーザーには、その商品に適したコピー(宣伝文句)を見せるようにしたり、申し込みページまでアクセスしたユーザーには広告露出を増やしたりします。また、すでに購入したユーザーには配信をしないようにすることで広告効率を上げたり、一定期間以上前にアクセスしたユーザーに再度告知をしたり、購入ユーザーには別の商品の広告を配信したりすることが可能になっています。
もちろん、こうしたクッキー情報はブラウザの設定で個人が自らの設定を変更することで削除することはできます。小生は定期的に削除していますが、多くの人はそのままなのではないでしょうか。そして、あなたが閲覧したサイトのドメインから発行されているクッキーはファーストクッキー、それ以外はサードパーティークッキーと呼ばれます。
今回問題となっているのはこのサードパーティークッキーで、複数のサイトからクッキーを発行して、個人を特定するような仕組みができているのです。
今回グーグルが発表したのは、サードパーティークッキーの使用を2年以内に完全に廃止するという内容でした。すでに米Mozillaは同社のウェブブラウザ「Firefox」についてデフォルトでサードパーティークッキーをブロックしていますが、市場の6割を占めるといわれているChromeでも廃止となる予定です。現段階でもChromeの設定をユーザーがブロックすることはできますが、今後はデフォルト(初期値)でブロックされることになり、ネット広告業界に大きな影響が出ることが予想されます。