それでも、抜本的な状況改善には至っていない。やはり、売りとなる商品がないことが大きいだろう。売れる商品がないのにアイテム数を増やしても、収益は高まらない。むしろ、管理コストがかさんだり値引き販売が増えたりして収益性が下がってしまう。また、売り上げが増えるとも限らない。
実際、最近のしまむらは大規模なセールを打っても売り上げが上がらないという現象が起きている。18年3~8月期に「誕生祭」や「感謝祭」などのセール企画を開催し、目玉商品を前面に打ち出して集客を図ったが、客数は期待したほど伸びず客単価も低下し、売り上げ向上にはつながらなかった。18年3~8月期の既存店売上高は、前年同期比6.9%減と大きく落ち込んでいる。
これは、商品に魅力が乏しければ、価格が安くなっても消費者はわざわざ店に足を運ばないということを示している。こうしたセールは売り上げが上がらないだけでなく、収益性の低下も招いてしまう。18年3~8月 期の連結業績の収益性は大幅に悪化した。売上高は前期比3.0%減の2756億円、営業利益は40.0%減の143億円と減収減益で、売上高営業利益率は8%から5%に低下した。
他方、ユニクロの業績が堅調なのは、売れる商品があるためだ。これまで、「フリースジャケット」「ヒートテック」「ウルトラライトダウン」といったヒット商品を生み出してきたが、それらが定番商品に育ち、今は看板商品となって収益に大きく貢献している。
売れる商品、看板商品を生み出すには、ユニクロの事例からわかるとおり、一度ヒットさせる必要がある。
ところで、フリースジャケットなどのヒット商品がユニクロで生まれたのはだいぶ前で、最近はこれらに匹敵するヒット商品を生み出せていないとの指摘がある。その指摘は確かだが、こうしたかつてヒットした商品が進化を遂げ、今は定番商品・看板商品となって収益に貢献している。これらによって、しばらくヒット商品はなくても、安定した売り上げを上げることができているのだ。前述した7年連続の既存店売上高の前年超えがその証左といえるだろう。
話をしまむらに戻すと、今のしまむらが苦戦を強いられているのは売れる商品がないためだが、それはヒット商品を生み出せていないことが大きい。かつて「裏地あったかパンツ」がヒットしたことがあるが、ヒット商品は圧倒的に少なく、看板商品といえるものはほとんど見当たらない。
こうしてみると、しまむらが不振から脱却するにはヒット商品を生み出す必要があるといえそうだが、実際は相当難しいだろう。
ファッションの販売で重要な要素となるのが「おしゃれ感」と「機能性」だ。だが、しまむらは、この2つが弱いと言わざるを得ない。機能性に関してはユニクロがダントツだ。繊維メーカーの東レと組むなどして高機能素材を生み出し、商品開発を行ってきており、機能性の面では一日の長がある。ヒット商品となったフリースジャケットやヒートテック、ウルトラライトダウンは、いずれも保温性が優れているといった高機能を売りとしている。しまむらが機能性の面でユニクロを上回るのは、かなり難しいだろう。
そうなると、勝負すべきはおしゃれ感となるわけだが、それも高い壁が立ちはだかる。それは、しまむらがおしゃれなブランドと認識されていないことだ。それは、立地に問題があることといえる。
しまむらは郊外ロードサイドを中心に出店を重ね、成長してきた。都心部にも店舗はあるが、数は少ない。言うまでもないが、おしゃれ感を発信するには郊外ロードサイド店よりも都心店のほうが適している。そのため、都心店が少ないしまむらがおしゃれなイメージを演出することは難しい。これは、しまむらが商品力を高める上で大きな障害となっている。