一方で、mixiの強みであった“コミュニティ”の考え方は現代的な形で受け継がれている。mixi2のコミュニティ機能では、相互フォローの関係にある人々を招待したり、承認制のグループを作成したりできる。さらに、アニメやスポーツ中継の同時視聴といったオンラインでの集まりから、キャンプなどのオフライン企画まで、幅広い活動を手軽に計画できるイベント機能と組み合わせることで、共通の関心事を持つ人々の交流をより活発にする仕組みを提供している。
興味深いのは、かつてのmixiの代名詞的機能であった“足あと”を実装していない点だ。誰が自分のプロフィールを見たのかが分かる「足あと」機能は2000年代のSNS文化を象徴する機能だった。しかし、プライバシーに対する意識が高まった現代において、他者の行動を可視化する機能は必ずしも歓迎されない。この機能の非搭載は、現代のユーザーのプライバシー意識に寄り添った判断と言えるだろう(マッシュアップとして、リアクションボタンを長押しすると“足跡マーク”を付けられる隠し機能はある)。
mixi2の登場は、SNSを取り巻く環境の大きな変化を反映している。いーローン・マスクがツイッター社を買収し、Xへの改名され、さまざまな改変がされていく過程でユーザー離れが進み、MetaのThreadsやBlueskyといった新興SNSが台頭する中、mixiもまた新たな選択肢を提示してきた形だ。
アルゴリズム推薦に依存せず、ユーザー自身の選択を重視する設計を採用し、さらにプライバシーへの配慮、従来のmixiから受け継いだコミュニティ機能の再解釈と、トレンドとレガシーをうまく融合した。
SNSの成否を決めるのは、最終的にはそこに集まるユーザーとコミュニティの質だろう。「今を共有でき、すぐ集える」というコンセプトのもと、どのような交流の場が形成されていくのか。アルゴリズムではなく人の縁を大切にしたつながりの中で、どんなコミュニティが育っていくのか。その答えは、これから集まってくるユーザー自身が示していくことになる。