グーグルが提供するサービスはいまや非常に幅広い分野に拡大しており、GmailやYouTube、さらにGoogleドキュメントのようなオフィス生産性アプリ、またモバイルOSのAndroidとそれを搭載するスマートフォンによって、これらのサービスを世界中の消費者に広く浸透させている。
そして、このエコシステムにユーザーを誘引する役割を果たしているのが、ウェブブラウザーアプリのChromeだ。
グーグルは長年、ウェブ検索を中心に据えた強力な収益エコシステムによって、本来なら誰もが自由に利用できるはずのインターネットに強い影響力を示してきた。そして、この状態が続くことで競争が阻害されていると主張するアメリカの司法省は、グーグルに対して反トラスト法(独占禁止法)訴訟を起こし、今年8月に裁判所は司法省の主張を認める判決を下している。
判決を受けて、司法省は11月にグーグルの独占的立場を是正するために必要な措置の1つとして、Chromeブラウザー事業の売却命令を出すよう裁判所に求めた。
われわれにとって「インターネットを見る」行為はすなわち、ウェブブラウザーを使ってウェブサイトを閲覧することだ。そして、いくつかの種類があるウェブブラウザーアプリの市場において、グーグルが無償配布しているChromeブラウザーは圧倒的なシェアを誇っている。
インターネット上のアクセス動向を解析しているウェブサイトStatcounterが毎月発表しているウェブブラウザーの最新のシェアにおいて、Chromeブラウザーは2012年からずっと首位を維持し続けており、そのシェアは実に60%を超えている。
また、グーグルがスマートフォン用に開発したAndroid OSや、Chromebookと呼ばれる安価なノートパソコンに搭載されているChrome OSでは、標準のブラウザーとしてChromeが搭載されているため、これらのデバイスを使っている人は意識せずともChromeを使っているはずだ。
グーグルにとってChromeブラウザーは、ただユーザーにウェブサイトを表示してみせるだけのものではない。ユーザーがインターネットで何かを調べるときに行う検索という行為を、グーグルのウェブ検索サービスに集めるという、重要な役割も担っている。
Chromeブラウザーは、ウェブサイトのアドレス(URL)を表示する場所が検索ワードの入力欄にもなっており、ここに調べたい事柄に関する言葉をいくつか空白で区切って入力すれば、その検索ワードは自動的にグーグルのウェブ検索サービスで処理され、その結果をユーザーに表示する。
Chrome以外のブラウザーの多くでも、URL欄や備え付けの検索欄からウェブ検索ができる。しかし、そこで使用する検索サービスについては、マイクロソフトのBingやユーザーのプライバシー重視をうたっているDuckDuckGoなど、いくつかある候補のなかから、ユーザーが選んで設定することが可能になっている。