1970年代から80年代にかけて空前のブームを巻き起こした女子プロレス。そこで長与千種とライオネス飛鳥がタッグを組んだクラッシュ・ギャルズと対立し、“全国民の敵”と呼ばれた最恐ヒール、ダンプ松本の知られざる物語を描いたNetflixシリーズ「極悪女王」が現在、世界独占配信中だ。
ゆりやんレトリィバァ、剛力彩芽、唐田えりからキャスト陣の熱演はもちろんのこと、白石和彌監督らスタッフのこだわりからもたらされる1980年代の衣装やセットをはじめ、ルール無用なリング上のぶつかり合いなどを忠実に再現するなど、当時の女子プロレスをめぐる熱狂を余すところなく描き出したドラマは、当時を知るファンだけではなく、当時を知らないファンにも強烈な印象を与えている。
本作の企画・脚本を担当したのは今年の3月31日をもって放送作家・脚本家を引退した鈴木おさむ氏。現在は"スタートアップファクトリー代表"という肩書で、スタートアップ企業のサポートを行う日々を送っている鈴木氏に、本ドラマが生まれた背景、そして放送作家を引退し、第2の人生に向き合う現在の思いを聞いた。
――現代とはまったく違う、80年代の熱狂が感じられるドラマでしたが、今の時代に80年代を描こうと思った理由は?
不景気が長引いている2024年という時代から80年代を振り返ってみると、スマホがないとか、そういった違いがあるのはもちろんなのですが、とにかくバブルの頃の日本なのでめちゃくちゃ元気があってキラキラして見えるんですよね。それがすごく面白いなと思ったんです。
80年代ってお金もあふれているし、ある意味クレイジーな時代だったと思う。(Netflixシリーズの)「全裸監督」を観ても、80年代の日本って何かあるなと思っていたんです。そこで女子プロレスを思いついたという感じです。
――女子プロに着目したきっかけはあったのでしょうか?
昔、テレ朝で僕が構成に入っていて、今田耕司さんがMCをやっていた「すじがねファンです!」という番組に、ダンプ松本さんと長与千種さんに出ていただいたんです。
その番組は、80年代の頃から、ずっとファンを続けている人が出てくるという番組で。おニャン子クラブのファンをずっとやっている人とか、そういう人が出てくる番組なんですが、そこに長与千種さんとダンプ松本さんのそれぞれのファンが登場する回がありました。
両者は今でもいがみあっているんですが、その時に収録現場で、あの「敗者髪切りデスマッチ」の映像を流したわけです。長与さんのファンの方たちは、あれ以降、その映像を見たくなかったというか、一度も見てこなかったとのことで。その場で本当に悔しそうに号泣するんですよ。それを見たときに、この熱量のものってなかなかないな、と思ったんです。
やはり時代が、プロレスやエンターテインメントと全力で向き合ってる時代なんですよ。今はテレビで発信されることに、それほど本気で向き合わないじゃないですか。それだけに、ある意味、狂気の時代を生き抜いた人たちの全力さというのが、テーマとしていいなと思ったんです。