鈴木おさむが語る「極悪女王」の"誕生のきっかけ"

企画は15秒で興味を持たせる

――現在の地上波ではこのドラマはできないと思いますし、Netflixならではの企画だなと思ったのですが。

この企画は最初からNetflixで実現したいと考えていました。最初につくった企画書の最初のページには、「極悪女王」というタイトルとともに、当時の髪切りマッチの写真をつけたんです。それで企画書を提出したときに「これはドラマなんですか?」と聞かれたので、「はい、ドラマです」と返したら面白がってくれました。

極悪女王?鈴木おさむ
実際の企画書を持参し、本作企画の経緯を説明する鈴木おさむ氏(撮影:今井康一)

――鈴木さんが企画を提案するときに心がけていることはありますか?

この作品に関しては表紙の、髪切りマッチの写真がすべてだったと思います。僕はよくタイトルが9割と言うんですけど、タイトルとこの写真がすべて。

「何これ?」という引きが大事だったかなと思います。それから説明に5分以上はかけないですね。まずはとにかく15秒で興味を持たせるというのは絶対大事だと思います。

――それはテレビなどで培われたことなのでしょうか?

そうです。テレビはすぐにチャンネルを変えられてしまいますから。テレビにはサイドスーパー(映像編集時に4隅に番組名やコーナータイトルなどを表示させるテロップのこと)というのがあって。テレビはそこにめちゃくちゃ命をかけているんです。

今、番組で何をやっているのかということを示すサイドスーパーがあることで、視聴者は無意識のうちに惹きつけられているんですが、毎分毎分、意識を途切れさせないように、その瞬間瞬間にものすごい力を注いでるんです。

だからテレビドラマも企画とタイトルが大切なんです。何がパンチがあるのか、目が離せないようにし続けていかなければならないんで。

放送作家を引退してからの今

――鈴木さんは3月末での、放送作家・脚本家の引退を表明したわけですが、今回の「極悪女王」などはその時代の置き土産のような位置づけなのでしょうか?

そうですね。単純に3月末までに脚本を書いたけど公開してないものがまだたくさん残っているんですよ。とにかく辞める前にやっていた仕事量が本当に致死量だった。たとえばラスト半年で本を3冊書いたし、小説も書いたし、連ドラもあった。さらに映画の脚本が3、4本あって。それ以外にバラエティーも20本やってたんですよね。

辞める前も、なんだかんだでもう最後だからと思って、取材を多く受けたんですが、今、振り返るとよく死ななかったなと思うくらい。だから体力的にも、メンタルも含めて何も名残惜しくないというか。やりきったなという思いがあって。だからこそ「極悪女王」は絶対にヒットしてほしいなと思っています。

極悪女王?鈴木おさむ
鈴木氏が代表を務める“スタートアップファクトリー”はtoC向けのファンドとして7月から始動した(撮影:今井康一)

――3月までは「放送作家」という肩書だったわけですが、4月以降はどういった肩書になるのでしょうか?

今はファンドを立ち上げたので。"スタートアップファクトリー代表"と名乗っています。

テレビで番組を立ち上げて育てていったように、これからはスタートアップ企業の相談に乗ったりしてサポートしていきます。僕がこれから10年かけてやる仕事ですね。今はいろんなスタートアップの人たちと日々向き合っています。その合間で、ラジオなどの表に出る仕事だったりをしています。

辞めてからは前のようにはテレビも見なくなりました。前は本を見て、こういうのを映画にしたいなとか思ったりもしていたんですけど、今はまったく思わなくなった。

えらいもんで、そこに対してまったく名残惜しいとも思わないですね。本当にびっくりするくらい切り替わりましたね。今はビジネスのアイデアを考えて、それをこの人にやってもらったらいいかなとか、そういうことを考える日々を過ごしています。