――この「極悪女王」でもそうですが、何者でもなかった若者がどん底から這(は)い上がろうとするドラマが面白くて。それはまさに鈴木さんが今やろうとしていることに通じるのではないかと。
僕がやってきたことってそういうことだったんですよ。芸能人ってやはり、何者でもないところから這(は)い上がってくる人たちなので。それは僕もそうでした。SMAPとの仕事もそうでしたし、いろんな芸人さんとの仕事のときもそう。それはプロレスもそうですし、今やっていることもそう。結局変わらないですね。
――そういう意味ではゆりやんレトリィバァさんを筆頭に、唐田えりかさん、剛力彩芽さんといったキャスティングは絶妙だったと思います。皆さんオーディションで選ばれたそうですが、特にクラッシュ・ギャルズを演じた唐田さん、剛力さんは、ここから這(は)い上がってやろうという熱量を感じたのですが。
ゆりやんも剛力さんもすごかったですが、特に唐田さんは人生をかけているように感じて、そこと今回の長与千種の人生というのが、とてもかぶって見えました。彼女はすごかったですね。将来、大女優になると思いました。
僕はそういうキャスティングがけっこう好きなんですよ。「離婚しない男 -サレ夫と悪嫁の騙し愛-」というドラマでは篠田麻里子さんに出演をお願いしたんです。
きっと篠田さんもいろんな思いでドラマに出てくださったんだと思うし、彼女自身、運命が変わったと言ってくれているし。やはり何かに懸ける人のパワーってスゴいなと思いました。
――あらためて質問を。放送作家・脚本家という仕事を引退し、そこから新たな仕事に向き合うわけですが、今の人生はしあわせですか?
僕は放送作家を32年間やってきて、楽しかったことって1回もなかったんですよ。本当に苦しかった。もちろんうれしいことや、感動したことはありましたけど、でも楽しかったかと言われれば、そうではなかった。僕は放送作家をやっているときがすごくつらくて、苦しかったんですけど、それでも自分で天職だとは思っていましたね。
そういう意味では、今も楽しくはないです。だって皆さんから出資していただいたお金を背負って、その中で3倍のリターンを出すために、いくつかの100億円企業を絶対作らないといけないんですよ。
ここで今、自分が向き合うことは、人の人生を背負うことだし、本当に日々が戦いなんです。ただ、皆さんの期待を背負ってお金を集めて、次のステージに向かうことができる、ということはありがたいと感じています。だからこの新しい戦いを今から10年やれるということに対しては、とてつもなくしあわせ者だなと思っていますね。
実は僕、イチローさんと白鵬さんと仕事をしたときに同じ質問をしたんですよ。「現役時代、楽しいことありました?」って聞くと、「ないよ」って2人が声をそろえて言って。「ただただしんどかった」って。やはりそうだよなと思ったんです。
だから全力で打ち込んでるときは、そりゃもちろんうれしいことも面白いこともありますけど、楽しかったかといえば、別に楽しくはなかった。でも、だから天職なんだと思うんですよね。