これに対しSearchGPTは、ウェブ上のリアルタイムな情報を参照して、タイムリーかつ正確な情報を提供するように開発されている(ただ、古い情報しか見つけられない場合は回答の情報も古くなる)。
OpenAIはニュース情報源としてフィナンシャル・タイムズやニューズ・コープ、アクセル・シュプリンガー、アトランティックといったパブリッシャーとの間でコンテンツ使用の契約を結んでいる。
Google検索も、「AI Overviews」と称するAIでウェブ検索結果の要約を文章化して提示する機能を5月に発表している(記事執筆時点ではアメリカでのみ提供)。AI Overviewsの背後にあるのはGoogleの大規模言語モデル「Gemini」だ。
ただ、AI OverviewsとSearchGPTは、現在のところは似て非なるものという印象が強い。いずれの機能も、質問トピックに対して複数のウェブサイトから集めた情報をAIで要約し、回答を自然な文章で提示するのは同じだ。ただ、AI OverviewsはGoogle検索に統合した状態で提供されているため、ユーザーはAI Overviewsを意識して使うことはないと考えられる。
AI Overviewsによる回答は必ず表示されるわけではなく、ユーザーに特に役立つ情報を提供できるとGoogleのシステムが判断した場合にのみ提示される。また、その回答の傾向は、どちらかといえば初心者向けの簡単な要約や入門的な情報を返すことを重視している。この点は、質問されたトピックについてより直接的な回答を生成し、さらに引用部分や情報ソースへのリンクを明確に提示することで、情報の透明性を強調するSearchGPTの特徴とは異なっている。
いずれもまだ開発が進められている段階であり、それぞれの機能や特徴は時間とともに進化していくだろう。また、その進化の先では、両者ともまったく同じような動作に収束していく可能性も考えられなくはない。
OpenAIは、SearchGPTはまだ限定的なプロトタイプの段階だとしている。これが広く一般に公開されるようになるには、少なくとも数ヵ月以上の期間がかかると考えられ、2024年内2位リリースされる可能性は低い。
SearchGPTは今後、ベータ版を試用したテスターからのフィードバックに基づいて機能の追加や動作の調整が行われ、2025年にかけて徐々にChatGPTに統合されていくことになるだろう。フィードバックの内容やテスト結果次第では、単独のサービスとしてリリースされる可能性もあるかもしれない。
SearchGPTやAI Overviewsのようなサービスが出てきたことで、ウェブ検索分野におけるロボット型検索エンジンの時代が、AIウェブ検索の時代へと移り変わっていく可能性も出てきた。AIウェブ検索が主流になれば、今ほどにはSEOでGoogleのクローラーへの最適化を意識する必要もなくなるかもしれない。
ただし、すぐにそうはならないだろう。Googleはウェブ検索を出発点として、数十年にわたりインターネット上の膨大な情報を分析し、その検索技術、情報収集技術をシームレスに活用してGmail、YouTube、マップサービスを展開するなど確固たる地位を築き上げてきた。そのため、サービスの核であるウェブ検索をいきなりAI Overviews主体に切り替えるとは考えにくい。