期待の社員がなぜ失速「不幸な」ミスマッチ防ぐ策

前記事でもお伝えしたが、リファレンスチェックは経歴の確認だけでなく、その人の「仕事の進め方やスタイル」を深く知るためにも大いに役立ってくれる。

リファレンスチェックを行うタイミングだが、私自身の例で言うと、応募者がいよいよ最終面接に進むという段階で行っている。

最終面接をクリアし、ほぼ内定が確定した後にリファレンスチェックを行うケースも多いが、万が一、それで落とすことになった場合、リファレンスチェックを受けてくれた応募者の関係者(前職の上司や同僚、部下)の心にも、少なからず影を落としてしまう。

「ほぼ内定が確定していたのに、自分のコメントのせいで、彼(彼女)は落ちてしまったのではないか……」と、罪悪感を抱かせてしまうのは忍びない。デリケートな部分だけに、ここは人事としても気を遣うところである。

プロの緻密なリファレンスチェック

リファレンスチェックは専門の代行会社に委託しているが、そのリサーチ力は目を見張るほど緻密である。

応募者の前職あるいは現職の上司、先輩・同僚、部下の三者に各1時間程度のインタビューを行い、その結果がA4用紙10ページ以上の情報量で送られてくる。

応募者が自己申告している経歴や仕事内容、実績に相違はないか? 三者それぞれに確認するほか、「本人の仕事の進め方」「強み・弱み」「職場での上司・同僚・部下への接し方」についても、事細かにつづられている。

では、どのように書かれているのか、レポート内容のサンプルを紹介しよう。これは実際のものではなく、あくまでイメージと捉えていただきたい。

<〇〇さんの仕事の進め方>
 
【前職の上司からのインタビュー結果】
 
〇〇さんは、強いリーダーシップで仕事を進めるタイプではない。部下や関係部署の意見を聞きながら、調整して仕事を進めていくタイプである
部下にある程度、仕事を振って「よろしく頼む!」と一任するよりは、「今の彼(彼女)の実力でできるだろうか?」「今の彼(彼女)の業務量・キャパシティで可能だろうか?」と気にしながら、依頼している印象がある。
 
【前職の部下からのインタビュー結果】
 
〇〇さんは、部下に仕事を丸投げせず、一緒になって自ら汗をかいてくれる上司だった。
常に部下の進捗や行き詰っているところを気にかけてくれていたので、私自身はやりやすかったが、「もっと自分に任せてほしい」と思う人にとっては、やりにくい面もあるのかもしれない。
〇〇さん自身、仕事を抱え込んでしまっているせいか、時折レスポンスが遅い時もあった。
 

このような形でさまざまな項目について、膨大なインタビュー結果が記載されている。

リファレンスチェックは、応募者にとって最も信頼できる、親しい関係性の人にお願いするケースが多いが、その場合、「事前に口裏を合わせて、いいことしか言わないのでは?」と信憑性を疑う声もある。

だが、リファレンスチェックのプロは独自の質問手法を持っており、その人物に対する評価をあらゆる角度から深掘りしていく。応募者の関係者が、本人についてどれだけいいことを言おうとしても、ついうっかり実態を明かしてしまうほど、インタビューに長けているのだ。

中には、相手が本心を話しているかどうか、表情の微妙な変化から読み解くためにも、「対面でしか行わない」というプロもいるほどだ。

リファレンスチェックは「踏み絵」の役目も

こうして応募者について、それぞれ異なる立場の関係者から評価をもらうと、おおよその人物像が見えてくる。

私がとくにフォーカスしているのは、応募者の「仕事の進め方」や「強み・弱み」、そして管理職であれば「マネジメントのやり方」だ。それが自社のカルチャーや配属先の仕事の進め方、人員構成(スタッフの属性や雰囲気)に、マッチするかどうかを重視している。