部下と上司の関係「ちょいゆる感」が実は重要な訳

次にいよいよ、「メンバーが主体的に行動し、仕事のやりがい・達成感を得られるチーム」におけるリーダーの姿についてお話ししましょう。

優れたリーダーの条件はいろいろありますが、大きく分けると2つ。1つは「ロジカルであること」、もう1つは「話しかけやすい柔らかい雰囲気」です。

「ロジカルであること」は、リーダーのベーススキルです。仕事に必要なことを、チームのメンバーたちにわかりやすく伝えることが、リーダーの仕事として必須だからです。

この「ロジカルであること」の基になっているのは、コンサルティング業界に由来する「ロジカルシンキング」です。

日本では、2001年5月にマッキンゼーの照屋華子・岡田恵子著『ロジカル・シンキング 論理的な思考と構成のスキル』(東洋経済新報社)が出版されて、一躍ブームになりました。

同書では、話の重複、モレ、ズレをなくす技術として「MECE(ミーシー)」が紹介されています。この「MECE」という言葉も、ブームに乗って広まりました。

「MECE」とは、「Mutually(お互いに)」「Exclusive(重複せず)」「Collectively(全体に)」「Exhaustive(漏れがない)」の頭文字からできた言葉です。何かを考えたり、正確な答えを導き出すために必要なこととされています。

リーダーがチームのメンバーたちに対して、仕事に必要なことを伝える際にも、こうしたロジカルシンキングに基づき、伝えるべきことを整理できるスキルが求められます。

話しかけやすい雰囲気を作る

一方、「話しかけやすい柔らかい雰囲気」は、人の感情と深い関わりがあります。

人には必ず感情があり、リーダーはメンバーの感情に影響をおよぼす存在です。そこでリーダーには、部下の感情を適切にくみ、配慮や寄り添うスキルが求められます。

リーダーはメンバーの行っていることを理解し、適切にコミュニケーションが取れるようでなければなりません。ですから、リーダーはいつでも、メンバーが躊躇なく話しかけられる雰囲気でいる必要があります。

そのため、リーダーに求められるのが「話しかけやすい柔らかい雰囲気」なのです。人は、厳しい表情の人より、笑顔でいる人のほうが断然話しかけやすいと思いませんか?

「上司と部下という関係があるのだから、メンバーはリーダーに対して、話の内容や言葉を選んで話してほしい」というスタンスより、「同じチームの仲間なんだから、何でも話していいよ」というスタンスのほうが、あれこれ相談しやすいのではないですか?

そこで、リーダーのポジションパワーを感じさせないように、メンバーにはフランクに接することが大切です。

もしかしてあなたは、「そんな態度だとメンバーになめられて、むしろよい関係が築けないのでは?」と考えているでしょうか。

そんなことはありません。

メンバーが話しかけやすく、何を話しても否定されないと感じられる柔らかい雰囲気を醸し出しながらも、仕事や成果に真摯に向き合っていれば、一緒に働いているメンバーには、その思いはちゃんと伝わるものです。

私も会社員時代に、特に説明をしなくてもメンバーが「あのリーダーはただ話しかけやすいフラットな人じゃない。仕事には真摯で厳しい」とわかってくれていたな、と感じた経験があります。

自分は「ロジカル」か?

それでは、リーダーに求められる2つの要素のうち、自分にはそのどちらかが足りていないと感じている場合に、どのように身につければいいのでしょうか。それをお話ししましょう。

リーダーとしては、チームのメンバーとともに会社から与えられたミッションをクリアする必要があります。

まずは自分自身で、「そのための目的は何で、手段は何か」「具体的に、何人で何をするか」を、明確にイメージできるかどうかを考えてみてください。