――このインタビューの直前、急きょ数分だけ、お2人で話す時間が設けられましたね。初対面とのことですが、部屋の外からもわかるぐらいの盛り上がりようでした。
ソニー・ホンダモビリティ 川西泉社長(以下、川西) ははは。ソニーは(事業を)売却してしまったが、ずっとPCをやってきた。そのつながりとかもあって、Windowsなどを展開するマイクロソフトとの付き合いはすごく長い。
マイクロソフト 沼本健CMO(以下、沼本) そうですよね。
――CESで発表された提携に至るまでの経緯を伺いたいのですが、まずどちらからアプローチされたのでしょうか。
川西 こちらからだ。モビリティーに限らず、ずっと(AIを活用した)自然対話みたいなものはやりたいと思っていた。
実は現職の前に、僕はソニーで音声対話のロボットを担当していた。そのときに音声対話のエンジンをどうしようかと考えて、ソニーがR&Dでやっているものや、マイクロソフトも含めいろんな企業がやっているものもあったが、やはり決定打がなかった。
――決定打というのは。
川西 一問一答で返せるものはあるが、いわゆる雑談っぽく、ヒトのように話せるものは実現できなかった。自分たちには(AIに学習させる)知識のデータ量が決定的に足りなかった。
膨大なデータ蓄積という観点で、検索エンジンを手がけているマイクロソフトやグーグルと、それをやっていないソニーとの差はすごく大きい。自前では限界があり、マイクロソフトに2018年ごろからいろんなソリューションを紹介してもらうなど、結構な期間にわたって模索を続けていた。
その後、(深層学習モデルの)トランスフォーマーが登場し、チャットGPTがドンッと出てきて、「ああ、これはすごい」と。(マイクロソフトが提携する)オープンAI、チャットGPTの登場がすごく大きなインパクトだったことに加え、過去の関係性も踏まえたときに、やっぱり自然対話はマイクロソフトとやりたいと思った。
モビリティーの目線としては、そういうものを車室内の楽しみにできないかなと。今年のCESのときにも、人とモビリティーの関係性を少し変えていきたい、再定義したいというメッセージで打ち出した。これまでの人と車の「操縦する」という一方通行的な関係ではなくて、インタラクティブな関係に変えていく要素の1つとして、自然対話がすごく重要だろうと思っていた。