こうした背景から去年、マイクロソフトに声をかけた。
――打診をマイクロソフト側はどのように受け止めたのでしょうか。
沼本 実はマイクロソフトとソニーには深い歴史がある。
例えば2019年、サティア(・ナデラCEO)と当時の吉田(憲一郎)社長とのクラウド提携に関する覚書締結の発表を私は手伝っていて、そこから実際にいろんなプロジェクトが生まれている。
ソニーのアイトリオスというIoTサービスのアジュール上での運用・サポートや、(ビデオ会議ツールの)Microsoft Teamsへの参加に便利な(ソニー製イヤフォンの)リンクバッズの認定機種などだ。
そんな中でこの問い合わせをもらい、(生成AIアシスタントの)コパイロットや生成AIの世界と、川西さんのチームが持っているビジョンの相性がすごくよかったので、ぜひサポートさせてもらおうという流れになった。
――モビリティーに生成AIが絡むことで、具体的にどのような付加価値が生まれるのでしょうか。
川西 ひとくくりで言ってしまうと、ユーザーエクスペリエンスだ。
モビリティーにおけるユーザーエクスペリエンスを考えると、運転する楽しみは当然あると思う。ただ、自動運転の世界が到来し、隣に会話できる人も乗っていなかったときに、代わりとなるものは何なのかと。そういったケースにおいて、コミュニケーションやエンターテインメントの手段として可能性があるのではないか。
沼本 ビル・ゲイツの時代から「Information at your fingertips(指先で情報を)」という考え方でやってきたが、皆さんの情報収集や生産性を向上させるうえで、今まで車の世界は別空間という感じだった。それがこの協業によって、当たり前のように車の中でも情報を扱えるようになっていく。
――パートナーシップの下での取り組みは、いつ、どこで何からスタートするのでしょうか。
川西 サービスをうちで開発する時に、マイクロソフトの技術的なソリューションをどれだけ活用できるか、今まさに(検証を)やっているところだ。いろんな交流の中で、開発体制は作れると思う。
個人的には、あまりモビリティーにこだわっているわけではない。(生成AIは)スマホの利用時などいろんなシチュエーションで使えるものだと思っている。
――例えば、車を乗り降りする前後に利用するスマホアプリやサービスなどについても、生成AIを活用して開発できる余地があると。
川西 そうだ。僕は(車を)ユーザーエクスペリエンスとしてしかとらえていない。たまたま「車に乗っている」という時間なだけだ。
一方で、人間は別にずっと車に乗っているわけではない。
――ソフトウェアが車の価値を定義する「SDV(Software Defined Vehicle)」という考えが出てくる中、何がこれからの車の競争力を左右すると考えていますか。