「ペットの福利厚生が広まらない」日本と欧米の差

メリット2:企業へのロイヤリティーUP

各個人をサポートする福利厚生があることにより、働きやすい環境を提供することができます。企業への定着や、生産性向上など中長期的な企業利益へとつながることが期待できます。

実際に欧米の企業では、下記のような事例があります。

さまざまな福利厚生が導入されている

【各個人に必要なサポートを提供している企業事例】

Google:社員が亡くなっても”10年間”給料を家族に支払う制度

在籍中に社員が亡くなってしまった場合、給料の半額をその社員の家族に10年間支払い続ける制度です。

Amazon:ペット同伴勤務可制度

Amazonでは社員110万人に対して1万頭の犬が一緒に出社をし、仕事をしていると言われています。実際、アメリカ人道協会の研究結果によると、犬がオフィスにいることで、社員同士のコミュニケーションの活性化が信頼構築に寄与し、組織力の向上、生産性の向上などが見られるとされています。

ペットの福利厚生
ペット同伴勤務可能制度を取り入れるAmazon(写真:Amazon公式サイトより)

Apple:卵子凍結費用を補助

女性社員の起用に力を入れるAppleでは、働く女性の中で、キャリア形成のため20代ではなく、30代や40代で出産したいと望む社員を支援するために女性社員の卵子凍結費用の補助を行う制度を導入。GoogleやMetaなども同様の制度を導入しています。

④Salesforce:ボランティア休暇と寄付制度

有給で年間7日(56時間)のボランティア休暇を取得することができ、上位100人のボランティアに選出された社員は、自分が寄付したいと考える非営利団体に1万ドルを寄付することができる制度を導入しています。

Tradesy(女性向けハイブランド品に特化したリセールプラットフォーム):ペット飼育者向け福利厚生制度

福利厚生としてペット保険サービス提供や、ペットオーナー同士の会合を開催するなど、働きながらペットを飼いやすい環境を提供しています。

先に述べたように、日本ならではの雇用形態や、キャリア形成の固定観念が根付く日本企業では、1人でも多くの人が平等に受けられる福利厚生を提供する傾向が強いです。そのため「ペット飼育者向け」という比較的マイノリティーになりやすい従業員を対象とした、福利厚生の普及には課題があるように感じます。

日本で導入進まないのはなぜ?

その一方で、日本企業はさまざまな社会課題に直面し、変革が求められていると考えています。

例えば、若年層に増加している「うつ病」、過労死と労働環境の問題、ジャンダーギャップと女性の活躍促進、日本の賃金水準の低下、人口減少と高齢化、国際競争力の低下、SDGsへの貢献、技術革新への対応などです。

このような課題に対して、企業の生産性向上や競争力強化を目的とする取り組みの導入は進んでいます。

従業員の健康促進と幸福感の向上を図る健康経営や、女性リーダーシップ推進、ワークライフバランス、ESG施策などです。

これらは、企業価値の向上につながりやすいため、優先して取り組まれる傾向にあります。

一方「ペット」の存在は企業にとって”解決しなければならない課題”としてあまり認識されていません。

企業それぞれの業種価値につながりやすい取り組みが優先され、「ペット」の存在は企業にとって”解決しなければならない課題”には、まだなっていないのが現状です。

では「ペット」の存在はどのように考えたらよいのでしょうか。課題ではなく、”ソリューション”として考えていくことが重要です。

ペットフレンドリーな企業になること、職場環境を整えることが、企業が抱えている社会問題の解決策の1つとして考えられます。