「ゆるい職場」は、最近注目されているバズワードの一つ。リクルートワークス研究所の古屋星斗氏は「ゆるい職場」を、「若者の期待や能力に対して、著しく仕事の質的な負荷や成長機会が乏しい職場」と定義している(出所:『ゆるい職場と若手研究まとめ:ゆるい職場がもたらす「育て方改革」5つの論点』)。
これは、働き方改革によって労働時間や業務量が減少したり、ハラスメントだと思われることを恐れて仕事の負荷をかけることを極端に恐れたりした結果、成長を実感できるだけの機会を上手く与えられないために起こることだと考えられている。
リクルートワークス研究所が、大企業に務める入社1年目から3年目の若手社員を対象におこなった 『大手企業における若手育成状況調査報告書』によると、「現在の職場を『ゆるい』と感じるか」という質問に対し、約36%が「あてはまる」または「どちらかと言えばあてはまる」と回答している。大企業の若手社員は3人に1人が、「うちの職場はゆるい」と感じているようだ。
仕事の負荷も残業も少ない「ゆるい職場」は、ひと昔前なら「うらやましい職場」だったかもしれない。だが、「成長できるかどうか」を重視するようになった最近の若手社員にとっては、物足りない職場になっている。
入社した会社のゆるさに失望し、成長の機会を求めて転職する。管理職世代からしたら、「厳しくても辞めるし、ゆるくても辞める。じゃあ、どうしたらいいんだ」というのが本音だろう。
背景には、時代の変化にともなう若者の価値観の変化がある。顕著なのが、就職のファーストキャリア化と、他社状況のオープン化だ。
最近の就活では、「私のファーストキャリアは……」というように、将来的な転職を前提に志望理由などを話す若手社員が増えている。終身雇用にこだわらず、転職を当たり前のものとして考えているのは若手社員の大きな傾向だ。
マイナビのキャリアトレンド研究所が2022年8月に発表したレポートによると、同年4月の新卒入社正社員のうち、3割近くが「3年以内に退職予定」と答えている。なお、「10年以内に退職予定」と答えた人は半数以上にのぼる。
もちろん、なかには10年、15年と同じ会社で働き続ける人もいるが、それは結果論でしかない。つねに「この仕事、この職場環境でどういう成長をするのか?」「どういう成長ができそうなのか?」ということを考え、納得できれば働き続ける。そんな仕事観を持つのが最近の若い世代だ。
SNSを使えば、容易に他の会社の情報を得られる時代になった。OpenWorkなどの社員のクチコミサイトも同様だ。今までは閉ざされていた社内情報が見えるようになり、他社と比較できるようになったことで、「うちの会社より、あの会社のほうが良さそうだ」と、転職を決断しやすくなったといえる。