そうではなく、「この経験を積めば、このような力が身につく」「今は成長実感を得られていないかもしれないが、確実に力はついている」などのように、マネジャーは都度、部下と成長に対する認識をすり合わせていく必要がある。
「部長」「課長」「マネジャー」など表層的な役職名は30年前と同じでも、求められる基準は大きく変わっている。過去の成功体験は捨てて、今の時代に合わせてマネジメントの前提をアップデートしていかなければ、若手社員の退職を減らすことはできないだろう。
では、部下に成長実感を持たせるにはどうすれば良いのだろうか? 私は、そのカギの1つは「人事評価」にあると考えている。
ほとんどの会社にある人事評価の機会を有効活用し、定期的に部下と成長についてすり合わせることが重要だ。人事制度や仕事内容をすぐに変えることは難しいが、人事評価の「運用」次第では、日頃から成長実感を持たせることができる。
若手社員に成長実感を持たせる人事評価には、いくつかのポイントがある。大前提になるのが、現状の課題とあるべき姿をすり合わせることだ。
マネジャーの認識に反して、若手社員は「自分はもっとできている」と思っていたり、「自分はそんな姿は目指していない」と考えていたりする場合がある。そのため、しっかりとすり合わせをおこない、若手社員にとって納得のいく成長の方向性を描くことが重要だ。
また、目標設定の際には、目標を細分化するのがポイントだ。目標が大きいと達成するまでに時間がかかるので、どうしても成長実感を得にくくなる。
マネジャーに求められるものはさまざまあるが、まずは、目標を分解して、ある程度の頻度で成長実感を得られるように目標設定をしてあげることが重要だ。
多くのマネジャーが人事評価に苦手意識を持っている。しかし、マネジャーの工夫次第では、若手社員に「この会社なら成長できる」という成長実感を持たせることができる。
人事評価は、ほとんどのマネジャーが避けては通れないもの。せっかく機会があるならば、人事評価のやり方をアップデートし、効果を高めていくべきだろう。
次回は、人事評価の一歩目である「目標設定」について、職場で成長実感を生み出すためのノウハウを紹介したい。