明るい安村に続く“世界で売れる芸人”は誰なのか

「安村はこれまでに海外進出してきた芸人を含めた中でも、海外で有数にウケて、イギリスで一躍有名人になりました。本人と話して、このチャンスを生かし、ここ1年は海外の仕事に振り切ることにしました。

少し前までは、芸人は地方(大阪)で売れてから東京に出てもう1回売れないといけないと言われていました。しかし、これからはさらにその先に海外があり、3段階のステップを自然と目指す時代が来ていると思います。

吉本興業には約6000人のタレントさんが所属していますが、安村は、今回のゴットタレントの成功の追い風を受けて、ほかのタレントさんたちに夢を与える存在として、海外への先陣を切ってほしいと思っています。思いっきり実績を作って突破口になり、次につなげてほしいです」

その一方、イギリスでブレイクしたことで日本での仕事量が急増している安村にとっては、いまは海外に出るより日本で仕事をしたほうが稼げる時期、という見方もある。

それを蹴ってまでも世界に向き合う気持ちを固めた背景には、会社の意思もあるが、「芸人として一生のうちに何度も巡ってくるわけではないチャンスがいま来ている。お金よりも夢や可能性を優先したい」との本人の思いが第一にあるという。

いまの追い風にどう乗るかを考える

海外で知名度がより広がれば、ワールドワイドなコメディアンとして日本での活動の場を広げることにもつながるだろう。そうなれば当然、仕事も稼ぎも増える。そこまでを視野に入れたうえでの世界進出への振り切りなのか。

「本人は長い目ではそこまで考えていないと思います。芸人としての嗅覚というか、いまの追い風にどう乗るかを真剣に考えているんだと思います。世界はそんなに甘くない。先々まで視野に入れて計算的に策略を練れるようなフィールドではありません。芸人は、未知の場所に行ってパフォーマンスをしてウケるのが何より楽しくて、うれしいんです。打算的な考えは思った以上にないと思います」(神夏磯氏)。

では、安村が長期的な目線で考えていないとなると、会社が安村の海外進出を後押しする狙いは、どこにあるのだろうか。

神夏磯氏は「長く見ても、安村単体では、そこに費やす渡航費等の投資を踏まえても、おそらくそんなに利益にはなりません。ただ、安村の面白さを世界に気づいてもらえたときに、安村だけでなく、『日本のお笑いに世界が振り向いてくれる』キッカケになる。振り向く人が現れたときに、『日本には世界でいちばん面白いお笑いがあること、世界有数に面白い芸人が山のようにいること』に気づいてもらえます。

弊社だけではなく、日本として、『世界に振り向いてもらって』から、お金につなげていけばいい。今はビジネスにならずとも、今の段階から未来のために種をまきつつ、チャレンジし続けることが大事だと思っています」と語る。

第2陣は話芸を含めたノンバーバル芸以外で勝負

今回の世界進出プロジェクトでは、安村のほかウエスPやGABEZ、市川こいくちをはじめとする体を使うノンバーバル(非言語で笑わせる)中心の芸人たちが第1陣となり、そのあとには話芸を含めた芸人たちが第2陣として続くことになる。第2陣の芸人や時期など詳細は現時点では未定だ。

第1陣のなかで神夏磯氏が期待を寄せる芸人の1人が、巨大昆虫に戦いを挑むネタや必殺技出ちゃったシリーズ、失格シリーズなどで、芸人がおもしろい芸人と認めるインポッシブル。

第2陣には、鬼越トマホークに期待しているそうだ。神夏磯氏は「(鬼越トマホークの)喧嘩ネタは、ハリウッドスターなど現地タレントを巻き込むことができ、多少のローカル言語のやりとりを入れれば成立します」とし、世界各地に輸出の可能性があるフォーマットと語る。