いろいろ考えてみたけれど、自分の特性や強みがよく分からないし、特に好きなものも思いつかないし、将来的にどうしたいのかも分からない、という場合に備えて、私が若い頃に知った暫定的な考え方を示しておきます。
それは「キャリアに迷ったら長期的に給料を高くすることを意識してみよ」というものです。先輩に教えてもらったか、何かに書いてあったのか、出所を忘れてしまったこの一文はとても利己的に聞こえますが、実は社会貢献を第一義にしています。
会社員など雇われのプロフェッショナルは、給料からの天引きで税金を払います。つまり給料が高くなれば、税金も自動的に高くなります。1円でも多く稼ぎ、1円でも多く税金を払うのは、すなわち社会のためになるはずです。
寄付をしたり、ボランティアをしたりするのとは趣が異なりますが、給料から安定的に税金を払うのも社会への立派な貢献です。給与が個人の貢献を正しく反映していて、税金が世の中のために正しく使われているという前提に立てば、この考え方は合理的です。
もちろん、世の中はそれほど完璧に運営されているわけではありませんから、前提条件が完全に満たされることはないかもしれません。とはいえ、この前提を完全に否定するものでもないだろうと期待します。
入社1年目が集中すべきことには、様々な考え方があるので、いろいろな人に聞いてみましょう。特に直属の上司には、最初に質問すべきことの1つかもしれません。
私がCMOなどをしていた頃、1年目の方々に期待していたのは、「1年後にできる限り優秀な2年目になる」ことでした。同様の期待を彼らの上司たちとも共有していました。社会に出て5年も10年もたてば、それぞれに個性や強みが発現してくることでしょう。優秀か否か以上に、向き不向きが分かってきます。いずれ、それぞれの強みをうまく使って活躍できるとすてきです。多様性の意義です。
では、入社1年目ではどうでしょう。その程度の期間で差が出てくるのは、組織の教育の問題ではなかろうか、と考えました。「新入社員の全員が優秀な2年目になる」ための構造や仕組みをつくり、新入社員を迎えたマネジャーたちの連携も促しました。1年目が優秀な2年目になれば、翌年には優秀な3年目になり、いずれ全組織が優秀になるだろう、というシンプルな期待もありました。
厳しい入社試験をくぐり抜けた新入社員たちの、初陣で勇名を馳せたい、という気概も分かります。自分もそうでした。しかし成果を出すことはとても大事であるけれど、どうやって成果を出すか、ということも同じくらい重要です。
「売り上げ1億円を達成しました」というのは素晴らしい実績ですが、今年の話です。来年は関係ありません。対して「売り上げ1億円を達成する方法を身に付けました」というのは、来年以降も使えます。四半期ごと、あるいは毎月、場合によっては毎週の振り返りで、「今回は、何を達成したか」に加えて「今回は、何ができるようになったか。何を学んだか」を、明確にしてみましょう。
これが有効なのは、1年目の間だけではありません。私も頻度は落ちましたが、今でも「今年は何ができたか」だけでなく、「今年は何をできるようになったか」を振り返り、成長を確認するようにしています。
さて、ついでに2年目について。無事に優秀な2年目になったら、「5年後、あるいは10年後にどのようなプロフェッショナルになりたいか」考えてみましょう。そして、そのために身に付けるべきスキルや獲得すべき経験をリストアップします。分からなければ上司やメンターの助けも借りましょう。