コンビニと組むことで開発力を鍛え、つねに客の動向にアンテナを張り、コラボなどで情報収集を怠らない。風通しのよい社風のため、ポジティブに開発に取り組める。赤城乳業が次々に新商品を出せるのは、こうした土壌があってこそなのだ。
その結果、2022年の売上高は対前年比7%拡大。実はアイス業界自体が伸び続けており、2013年から10年間では、33.7%に伸びている。総務省の家計調査で2人以上世帯のアイスクリームの年間支出金額は、2022年に前年比6.9%となっている。
その中でも、赤城乳業のアイスが伸びた要因の1つは、コロナ禍でコンビニやドラッグストアよりスーパーでアイスを買う人が増えた際、マルチパックの同社商品を買う習慣がついた顧客が多かったことだ。
「ガツン、とみかん」も伸びた。人気ユーチューバーでもあるお笑い芸人、江頭2:50氏が同商品の熱烈なファンで、自身のユーチューブチャンネル『エガちゃんねる』で2020年からくり返し取り上げていた。赤城乳業に本人が電話しCM出演したい、と申し出たことがきっかけで、2022年3月17日からまず、ウェブCM第1弾が実現している。
ソフトクリームのアイス部分だけをカップに詰めたソフシリーズも、北海道産の乳製品だけを使うリニューアルを行い、売れ行きが伸びた。
岡本課長は、自らの仮説と断ったうえで「コロナ禍でチョコ系やフルーツ系のアイスが結構売れました。アイスはお菓子ほど重くなく、おうち時間のおやつ事情にマッチしていたのではないでしょうか。その中でおやつ感のあるチョコ系、フルーツ系のアイスの選択肢が赤城乳業にも多くある影響もあったのではないでしょうか」と分析する。
江頭2:50氏のエピソードからもわかるように、赤城乳業には熱心なファン層がある。それでもなお、近年は話題性が必ずしも売れ行きに結びつかない苦労がある、と岡本課長は明かす。
「昔は『どんな味だろう』と食べて盛り上がったのが、最近は味の想像がつかないモノは買われない傾向があります。人の報告を聞いて満足しちゃうんです」(岡本課長)。せっかくネットで盛り上がったとしても、実際に商品に手を伸ばす人は減っている、とみる。変化したのは10年ぐらい前から、というからSNSの浸透がどうも、ヒット商品を出す難しさに影響しているようだ。
数々のヒット商品を出す赤城乳業においてすら、近年の市場を読む難しさがある。この悩みには、商売をする多くの人たちが共感するのではないだろうか。しかし、厳しい環境だからこそ、求められているモノが何かを考え、しっかり調査をして裏付けを取り、挑戦していくしかないのだろう。
一方で今後の業績成長には自信を示す。コンビニには強みを持つが、スーパーなどほかの販路はシェアを伸ばす余地があるほか、例えば関西圏などより多くの顧客を開拓できる地域があるとみているからだ。嗜好の多様化などによってヒット商品が出にくくなっている中で、赤城乳業はどこまで成長を続けられるのか。