ガリガリ君の「看護師を目指す心優しいお姉さん」という設定の「シャキ子さん りんごヨーグルト味」も同じく40周年記念商品として出している。
さまざまなコラボも実施している。熊本県の人気キャラクターのくまモンとは「ガリガリ君 九州みかん」(2027年3月発売)でタッグを組んだほか、不二家ネクター、リプトンなどの食品企業もあれば、サッカー日本代表、ポケモンなどコラボ相手のジャンルは幅広い。コラボを通じて社外のネットワークで得られる情報も、商品開発の役に立っているという。
ガリガリ君以外も含め赤城乳業は年間100種類を超える新商品を発売している。開発に当たり、一番重視するのは季節性。夏は爽快感を求められるが、冬はクリーミィで濃厚な味を求められる傾向がある。
冬にアイスを食べる習慣が一般化したのは、2015年12月に『マツコの知らない世界』で「冬アイスの世界」を特集したことがきっかけ。「おそらく劇的に変わりました。各社冬アイスに力を入れるようになったと思います」と岡本課長は話す。
近年の同社の大ヒット冬アイスといえば、「かじるバターアイス」だ。2021年2月に期間限定で販売したところ、SNSを中心に「バターそのものを食べているみたい」「パンの上にのせたらすごくおいしかった」などと話題を呼び、予測を大幅に超えてわずか1週間で完売した。
その話題性から、日本食糧新聞社の令和3年度「第40回食品ヒット大賞」の優秀ヒット賞を受賞。バタースイーツは2010年代後半から、バターサンドその他で流行し、人気になったジャンルでもあった。
同社の新商品は、発売4カ月前に取引先に案内を出す必要があることもあり、1年ほど前から企画がスタートする。かじるバターアイスも、1年ほど前から冬に食べたい濃厚なアイスは何か、という点から出発し、各部署のメンバーで打ち合わせした際、「バターを丸ごとかじるような商品があったら面白いんじゃないか」、とアイデアが出た。さまざまなバターを食べ、色や形などを検討し、バターをイメージしたパッケージデザインにした。
赤城乳業が年間100種類以上というハイペースで開発ができるのは、コンビニの拡大と伴走するように発展してきたからだ。「昔は、小売店のアイスのショーケースに、大手企業の名前が書いてあったのをご存じですか? 大手さんが既存の流通を押さえているので、新興の当社が食い込むのは難しかったのです」と岡本課長。
ガリガリ君が登場した1981年は、大手のコンビニが出そろい、拡大を始める頃だった。『ガリガリ君の秘密』によると、赤城乳業はコンビニ専門営業チームを作って、他社に先駆けコンビニルートの開拓に力を注ぎ、商品開発においてもタイアップを強化した。
「コンビニさんでは、毎週商品の改廃が行われます。そのため、どんどん開発する必要がありました。当社はアイス業界では4位ですが、今でもコンビニさんのシェアは高いです」と岡本課長。コンビニに鍛えられ、開発力を高めていった側面があるのだ。
そんなスピードで、息切れはしないのか。「ネタに困ることはないですか?」と聞くと、岡本課長は「そんな話は部署内でもあまり聞きません。世に出ていないアイデアもたくさんあります」と話す。
つねに挑戦できるのは、「読みが外れて損を出した際も、少しのペナルティーでチャラにしてもらえる。給料が下がる、査定が下がるということはない。一方で、プラスの結果を出したら表彰されます。挑戦しないのはもったいないので、新商品を作りたい、という内側の熱は高いと思います」と岡本課長は話す。役員との距離が近く意思決定が速いことも、プラスに働いているという。