これまでにあまたのバージョンが放送されてきた恋愛リアリティー番組だが、参加者を35歳以上限定とする『あいの里』(Netflix)が、40代以上をざわつかせている。
『テラスハウス』(フジテレビ系)の“おばさん・おじさんバージョン”である同番組は、いい大人が大ゲンカしたり、仕事もせずに恋愛にはしゃぐ姿に衝撃を受ける一方で、話数を重ねて見ていくと、そこには人生の中盤を過ぎた40~60代出演者ならではの人生観や生き様そのものが映し出されていることに気づく。
それは日々の仕事に忙殺される同年代視聴者にとって、思いもよらなかった気づきになるのと同時に、共感にもつながっているようだ。
恋愛リアリティー番組といえば、かつての『あいのり』(フジテレビ系)や『テラスハウス』(同)でおなじみ。恋愛をするために集まった男女が、旅行や一軒家での生活を通して、誰が誰を好きになり、恋人を作る目的を達成できるかを台本なしで追いかけるドキュメンタリー的な番組だ。
昨今では、現役高校生たちが出演する『今日、好きになりました。』(ABEMA TV)や、10代出演者が中心になる『オオカミくんには騙されない』(ABEMA TV)など若年層をターゲットにした番組が女子中高生たちの間で人気になっている。
そんな流れと逆行するように生まれた『あいの里』の出演者は、35歳から最年長で60歳。とにかく年齢層が高くて、幅広い。そんなおじさん・おばさん層の恋愛したい人たちを集めてフォーカスするのは、これまでの恋愛リアリティー番組としては確かに新しい。日本のNetflixでも週間ランキングでトップ10入りを果たしている。
その一方で、“大自然の古民家を舞台に人生最後の愛を探す物語”をテーマにする本番組は、これまでのフォーマットをそのまま踏襲している。
とあるビレッジの古民家に集められた男女たちは、力をあわせて家をリフォームしたり、畑仕事をしてバーベキューをしたり、毎日の食事を一緒に作ったりしながら、田舎の一軒家で共同生活を送る。
そのなかで恋をして告白し、カップルになれば2人でビレッジを出る。振られれば1人で去り、また新しい人が入ってくる。タイミングごとに出演者の心情を吐露する場面や、毎日全員が書いている日記の内容なども挟み込まれる。
かつての恋愛リアリティー番組とフォーマットも似ており、既視感だらけの枠組みのなかで、本番組を成立させているのは出演者たちの年齢と属性だ。
12歳の息子を持つシングルマザーの45歳セラピストや、結婚歴なしの35歳経営者、結婚歴2回の60歳絵本作家、海外で活動していた結婚歴あり51歳俳優、心理学者でクリニックを経営する結婚歴なし60歳など、なかなかの濃いメンバーばかり。このメンバーを見ただけでも、どんな番組になるのか気になってしまう。
実際に見てみると、年齢層が高いだけに落ち着いた雰囲気になるのかと思いきや、いきなり出演者たちのテンションが高い。1~2話を見たあたりでは、年甲斐もなくはしゃぐ姿や、第一印象では誰がいいというトークなど、従来の恋愛リアリティー番組と何ら変わらない彼らの姿が映る。
ただ、セックスなど性的な話も出てくるのが、この年代ならではと納得する部分もある。年を重ねた分の男女間の距離が10~20代とは明らかに異なるのだ。
「人生最大の大勝負」と言いながらあっという間に意中の人ができたり、理想の相手を見つけて、相手が自分にとってふさわしいかを見極めるのが早いのも、本番組ならではだろう。