成長したのにVCが「低評価」を付ける企業の特徴

そのため、起業家として非常に重要なこと――あなたがバリュエーションを最大限に活用するとして――は、次のラウンドの投資家の高まる期待に沿うために必要な時間を稼げるほど、十分な額の資金を確実に調達することだ。

アンドリーセン・ホロウィッツで見てきた起業家の犯す大きな過ちは、高めのバリュエーションで少額の資金しか調達しないことだ。これは決してあなたが望まないことだろう。

これでは最高のバリュエーションを確立しても、次回のラウンドで現在のラウンドのバリュエーションをはるかに上回るために必要とされる事業目標を達成できるほどの資金は、手に入らない。

可能性3 競争の少ない環境の発生

第3に、競争がバリュエーションを推進する。認めようが認めまいが、バリュエーションは科学というよりもアートである。

「取引の興奮」によって、特定のステージの企業にふさわしいと思われる以上の金額を、VCから引き出すことがある。それに、前回のラウンドから上がったバリュエーションのハードルは、競争相手を追い払う。

シリーズBラウンドの投資家は、ビジネスを気に入るかもしれないが、前回のラウンドのバリュエーションを見て、あなたの期待に応えられないと思うかもしれない。相手がこのような懸念を抱いたとしても、残念ながら口に出されないままである。

十分に対話をせずに他人の期待を忖度した場合、このようなことは実際に起きるものだ。

事業の進展に比例したバリュエーションを示せないことで、あなたの気持ちを害するのではないかと考えて、シリーズBラウンドに名乗りを上げない投資家が多くいれば、ラウンドで競争が生まれなくなる。これは一般に好ましくない状況だ。

過大評価の後の過小評価で生じる問題とは

わたしが言っていることへの明白な反論はーーもしあなたが、会社を有利にするためにバリュエーションを過度に引き上げることに否定的なわたしの議論にまだ反対していないならーーどれも興味深い話だが、問題にはならない。

つまり、あるラウンドで過大評価の恩恵を受け、次のラウンドで過小評価されてその代償を払うとしても、やはり資金を得られているのだから。

誰が過小評価を気にするというのか?

VCから資金調達するときの手順は次のようになる。

VCはあなたに現金を渡し、あなたはVCに、双方が合意したバリュエーションの条件に相当する数の株式を発行する。

たとえばVCが、会社株式の20%取得と引き換えに、500万ドルの投資に同意したら、VCは500万ドルを会社に渡し、会社は株式総数の20%をVCの持分として発行することになる。

この場合の株式の希薄化について説明すると、あなた、あなたの会社の従業員、会社のその他既存株主の株式は、この20%により「希薄化」される。

つまり、この資金調達ラウンド前のあなたの持分が10%だとすれば、このラウンド後には8%になる。

たいていの場合、会社は当然その後のラウンドでも資金調達を続ける。往々にして調達額は次第に増加し、(望むらくは)バリュエーションもかなり高くなる。

その後10%の会社株式と引き換えに、2000万ドルの資金を調達することになった場合、この10%の発行により、各株主の議決権割合が弱まる。

あなたは8%保有していたが、今や7.2%になる。

よって当然、バリュエーションに関するわたしのコメントに対して、次のような反論が出てくるだろう。

最初の資金調達で会社を過大評価され、結果的に10%未満に持分が希薄化したとしても、どのみち7.2%に落ち着くなら、2回目の資金調達で過小評価された代償を払うことを気にする人がいるだろうか?

従業員はバリュエーションをこう捉える