2020年4月7日に第1回の緊急事態宣言が発出されて、3年が経ちました。この3年間、日本人はさまざまな困難に直面しましたが、幸福だったでしょうか。それとも不幸だったでしょうか。本稿では、コロナ禍によって日本人の幸福感に変化があったのか、日本人にとってそもそも幸福とは何なのか、というテーマについて考えてみます。
まず、統計を確認します。「国際幸福デー」の3月20日、「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN)は「World Happiness Report」2023年版を公表しました。国別の幸福度ランキングで、日本の順位は137カ国中47位でした。
この統計は、各国の約1000人に「最近の自分の生活にどれくらい満足しているか」を尋ね、過去3年間の平均値でランク付けしています。今回の2023年版は2020~2022年の3年間の平均値で、全期間にわたってコロナの影響が出た初めての調査結果です。
過去の日本の順位は、下のグラフの通りです(2014年は公表なし)。公表を開始した2012年から2015年まで40位台でしたが、その後は下がり続け、2020年に62位まで下がりました。ただ、そこから回復し、2010年代前半に近い水準に戻っています(※外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。
過去最低だった2020年(2017~2019年)の62位から2023年(2020~2022年)の47位に15位もランクアップしており、指数の値も上がっています。コロナ前と比べて日本人の幸福感は上がっていること、コロナが日本人の幸福感を低下させなかったことは間違いなさそうです。
コロナ以降、日本人の幸福感が増しているのは、なぜでしょうか。調査をしたSDSNは、国や年による幸福度の違いは、「1人当たりGDP」「社会的支援」「健康寿命」「人生の選択の自由度」「寛容さ」「腐敗の少なさ」という6つの変数によって4分の3以上を説明できるとしています。
しかし、諸外国はいざ知らず、近年の日本にはこの説明は当てはまりません。日本では、「1人当たりGDP」は長く不変で、すでにコロナ前を上回っている諸外国に劣後しています。外出制限で結婚・就職・転居などが制約され、「人生の選択の自由度」はむしろ低下したと疑われます。他の4つの変数も、大幅に改善した気配はありません。
ヒントを探るために、20代~70代の男女49人に、この調査結果を見てもらい、意見・感想を尋ねました。まず、調査結果に「納得いかない」と反発する意見が聞かれました。
「営業の仕事をしています。お客様との対面でのアポを取りにくくなり、営業成績を維持するのにずいぶん苦労しました。あと、以前はよく観に行っていたライブも、すっかりご無沙汰です。公私ともにストレスが溜まる、最悪の3年間でした」(30代男性・会社員)
「飲食店のバイトのシフトを減らされて、もともと貧乏な暮らしがさらに厳しくなりました。九州の実家からは『帰ってくるな』と言われて、家族や故郷の友人とのつながりが薄れました。コロナで幸せになった? 勝ち組の人に限定して調査したんですかね」(20代女性・フリーター)
一方、調査結果に「納得できる」「なるほどと思った」という意見が中高年層、とくに女性を中心に多数ありました。次のようにコロナによって起こった変化を高く評価していました。