管理職は「人を管理する仕事」という残念な勘違い

窓際に立つ男性
職場の心理的安全性を高める、管理職の「管理」の考え方について解説します(写真:ふじよ/PIXTA)
「管理職とは、部下を管理する仕事だ」と思っている日本人のマネジャーは多い。だがその考え方では、職場のメンバーをのびのびと働かせ、チームとしての成果をあげることは難しくなるだろう。元Googleの人材開発責任者でもあるピョートル・フェリクス・グジバチ氏の最新刊『心理的安全性 最強の教科書』から、職場の心理的安全性を高める管理職の「管理」の考え方、マネジャーの役割について解説する。

さて、皆さんに質問です。日本語に「管理職」という言葉がありますが、管理職とはいったい何を管理する人なのでしょうか。日本の管理職の皆さんにぜひ質問してみたいです。あなたは何を管理していますか。

「管理職」という言葉は、部下やメンバーなど「人を管理する」というニュアンスが強いように思います。僕はこの言葉が嫌いです。

「人を管理する」ことのイメージ

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僕がイメージする「人を管理する」は、刑務所の中に受刑者を拘置するような景色です。時間になったら否応なく起床させ、点呼を取り、食事を与え、作業場に向かわせる。

これが「人を管理する」です。

もう少し身近にある例も挙げましょう。僕がよく利用する駅は、ホームの幅が狭くて、通勤時間帯はかなり混雑します。発車しようとする電車からはみ出している人たちを、駅員さんたちが必死になって押し込みます。とにかく乗客を詰め込んで、発車時刻に間に合わせようとします。

これもまさに、「人を管理する」ことだと思います。運行時間の厳守や乗客の安全を守るために必要な仕事なのだとは理解しますが、毎朝、僕はこの光景を見るたびに暗い気持ちになります。

これらはたとえ話ですが、僕が言いたいのは、「人を管理する」ことは、「人を“もの”として扱う」ことと同じだということです。

あなたの組織にもいませんか? まるで“もの”のように「人もコントロールできる」と勘違いして、「こうすればいいのに、なぜそうしないの?」と自分の考えを押しつけたり、「お前はこうだからダメなんだ」と一方的に決めつけたりするマネジャーが。

相手に対して怒鳴ったり、プレッシャーをかけたりして、自分の意に沿わせようとする。僕はこれが「人を管理する」ことだと解釈しています。

日本の企業では、「人を管理することが管理職の仕事」だと勘違いしている人が多いようです。

人を「管理」するのではなく「支援」する

本来、人は管理するものではありません。

では、管理職は何を管理するのかといえば、仕事をする「人」ではなく、仕事をする「プロセス」であり、その先にある「結果」です。結果を生み出すために必要不可欠なリソースを管理し、結果を生み出すまでのプロセスを管理します。目標設定をメンバーと一緒に行い、その目標達成のために、「いつまでに何をするか」を管理していきます。

そして目標達成が難しそうな場合は、目標を下げるか、メンバーの行動変容を促すことで、目標達成を目指すのです。

そこで、こんな疑問が湧いてきます。

「メンバーの行動変容を促す」と述べましたが、メンバーの行動を変えさせようとするのは、「人の管理」ではないのか。

もっともな疑問です。「もっとしっかりやれ」と叱咤激励したり、「目標達成しなければ評価に響くぞ」とプレッシャーをかけたりするのは、「人を管理している」と言われても仕方ありません。

では、どうするのか。