上司への「ほうれんそう」(報告・連絡・相談)を実行するときに「もう少しちゃんとできてから」とか、「納得いく出来になっていないから」という理由で、ついつい報告が遅くなるケースは多いのではないでしょうか。
もちろん、報告の対象が、顧客などの対外的な相手である場合は、このような方法をとるほうがよい場合もあるでしょう。しかし、「上司と部下」の関係において、こうした考え方は百害あって一利なしだと思います。
私たちは「相手の期待値」を100%確認し、それを共有した状態で事を運ぶことはほとんどなく、双方曖昧なままで進めていくケースが多いと思います。こういう場合に、「ちゃんとできてから報告しよう」という考えは非常に危険なのです。
特にこれは相手の期待値がつかみづらいような、慣れない仕事や仕事相手を前にしたときに特に重要になります。
まず、「ちゃんと」というのは、何をもって「ちゃんと」というのでしょうか。これは先に述べたようなケースの場合、独りよがりの「ちゃんと」であることが多く、「自分にとってちゃんとした」状態でやったことが、「相手の期待値」とかけ離れたものになっている可能性が非常に高いのです。とくに、初めて一緒に仕事をする人や、手の内がわかっていない人同士で仕事をするときには、十分に注意しておかなければなりません。
こうした場合には、「生煮えの状態」でもいいので、「多頻度・短サイクル」(短期間で回数を多くして)でコミュニケーションを取っておけば、「同じ成果物を見ながら」お互いのギャップを認識し、軌道修正をかけていくことができるのです。
上司側にも責任があります。完成度よりも短サイクルでのレポートを奨励する雰囲気を醸成しておくこと。これは職場コミュニケーションの基本でもあります。
仮想的に、どこかにトンネルを掘ることを考えてみましょう。大がかりな工事ではなくて、たとえば山の中で生活しなければならなくなって裏山に数メートルぐらいの簡単な穴をあける程度のものと思ってください。
大きく2つのアプローチがあるでしょう。1つ目は、まず小さな穴でもいいから格好を気にせずにどこかを開通させてしまうというものです。この場合には、はじめにあけた穴を通してまずは活用がはじまり、徐々にその穴が広がって活用度が上がり、いつの間にかトンネルができあがります。
2つ目は、「完璧な精度で」部分的に掘りはじめるということです。この場合、時間がなかったり、途中で予算が変わったりという理由で、「トンネルが最後まで完成せずに途中で放置されてしまう」という可能性が高くなります。
もちろんここでの「トンネル」は単なる譬えで、何等かの仕事と置き換えて考えてもらえばよいでしょう。
考えてみると、私たちの身のまわりには「掘りかけのトンネル」があちらこちらに見られます。たとえば、「道具から入って」長続きしなかった語学の教材や健康器具などがあります。これらは、「やるなら完璧にやろう」と思ってスタートし、結局は「トンネルが開通しなかった」わかりやすい例ではないでしょうか。