1つの番組を成功に導くために、社内の各部署が連携し、問題点を共有して解決する。制作チームを中心に、多くの社員とスタッフが半年以上に及ぶ準備期間を経て、生放送の当日を迎えるのだ。
外部からの毀誉褒貶もある「24時間テレビ」だが(その内容に関しては今回は触れない)、日本テレビ社内での「求心力」という意味では巨大なパワーを有しているのである。
さらに「24時間テレビ」には、大きな「24時間テレビ効果」も存在している。
それは『制作手法・演出技法の共有』という機能である。
「24時間テレビ」では、毎回「総合演出」は違う人間が務めている(2回3回と担当することもあるが)。
たいていはその年に番組を「当てている」演出家、ヒットメーカーである。
そして「24時間テレビ」ほどの大きな生放送となると、総合演出の下に「演出担当者」が4~5人つくのだ。
この「演出」の人間は、それぞれが自分でレギュラー番組の「総合演出」を担当している、いわば「一国一城の主」である。
日頃は自分の番組で、存分に采配を振るう人間が「24時間」では「総合演出」の下で手助けをして一緒に番組を作っていくのだ。
私自身20年ほど前に「24時間テレビ」では、「とんねるずの生ダラ!!」のプロデューサーが総合演出を務めた回に、演出担当として生中継パートの企画を担当していた。
ある年は「THE夜もヒッパレ」のプロデューサー、別の年は「伊東家の食卓」総合演出、また「笑ってコラえて!」の総合演出など、当時の日本テレビでヒット番組を作る人の下で、およそ半年にわたって彼らの「番組の作り方」をじっくり見ることができたのだ。
それぞれ独特の演出手法をもっていて、発想もそれぞれ違う。
タレントへの接し方、細部へのこだわり方など、その後マネをさせてもらうこともあったし、「この人の手法とは違うやり方をしないとコピーになる」などと自分の技量を磨くヒントをもらうことも数多くあった。
そして私が「24時間テレビ」の総合演出を担当した際は、「行列のできる法律相談所」「世界一受けたい授業」などを担当する後輩が、演出担当としてサポートしてくれたのである。
さらに私は総合演出をやった後で、後輩が「24時間テレビ」の総合演出を担当した年には、演出担当として後輩の番組作りをサポートしたこともある。このような制作体制によって、日テレでは各番組の総合演出・プロデューサーは“同志”としての意識が固まってくるのだ。
日テレ以外の局では、ほかの番組の総合演出・プロデューサーは「ライバル」という雰囲気を感じることも多いが、「24時間テレビ」における総合演出・演出のチーム体制によって切磋琢磨されることで、日テレの番組制作力は確実にパワーアップしてきたと言えるだろう。
フジテレビの「27時間」もかつては「24時間」と同様の求心力があったはずだ。
“生放送の巨大番組”というのは、会社に活気を与える一大イベントなのだ。
2月16日に配信した拙稿「テレビ局から有力社員が次々いなくなる深刻事情」でも解説したように、アナウンサーや有名プロデューサーの退職が相次ぎ「魅力が失われてきた」とされるテレビ局だが、「ここぞ」という局面には力を発揮するだけの潜在力は、まだ失われていないだろう。
とくにフジテレビは、日テレから独立して以降各局で番組を作ってきた私から見れば、「潜在的なパワー」を現在もいちばん持っているテレビ局である。
多くのフジテレビ社員と話をしていると、「ウチなんてずっと数字悪くってダメっすよ!」と口にするものの、そこに“深刻な暗さ”はないのだ。
どこか楽観的で前向きなキャラクターの社員が多い印象である。