前編では、トヨタ自動車はすごいという話をしてきました。トヨタがどれほどすごいのか。今回刊行した第2巻から、取り上げてみましょう。
次の図で、赤い実線がトヨタの実質売上高の推移になります。そして、青のほうが日産自動車です。
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昨今、しばしば成長とか成長戦略という言葉が使われますが、成長とはどういう現象かをきちんとわかっている人は少ないのではないでしょうか。
トヨタの成長は確かにすごいのですが、企業1社を取り上げたところで、そのすごさはわからない。かつては同じ場所にいた他社と比べ、その足跡を比較したときに初めて、そのすごさがわかるのです。
1965年、最初の東京オリンピックの翌年から1980年ぐらいまで、トヨタと日産の間にはちょっとは差がついていますが、差が開くという状態にはありません。
この時期は、トヨタと日産のデッドヒートの時代です。抜きつ抜かれつとまでは言いませんが、単月ベースで見ると、日産がトヨタの上に来る月もありました。
ところが、1982年を境に大きく差がつき始めて、その後の日産は二度とトヨタの背中を見ることがないというところまでトヨタが引き離しました。
企業の成長とは、こうした現象を言います。1982年までは、高度成長の中で両社とも同じように成長している。つまり、企業が成長したのではなく、市場が成長したのです。
では、なぜここで分かれたのか。
それを掘り下げる前にもう一度図を見ていただくと、最初の10年は高度成長です。私たちは、高度成長はすごかったというイメージを持っていますが、その「すごかった」時代の売上高の傾きと、2000年から先の傾きを比較してみてください。
日本経済の停滞、失われた20年などと言われていましたが、そんな中でも、トヨタは恐ろしいほどの成長を遂げています。データを見れば、日本経済総崩れではなく、きちんと成長している企業があるのです。
ちなみにこのパターンは、トヨタだから、ということではなく、第2巻に登場する110ケースの多くに共通して見られるものとなっています。
では、何が起きたのでしょうか。1982年まで、トヨタは日産と競争するステージにいます。でも、そこで技を繰り出して日産を引き離すと、その先は、トヨタのライバルは日産ではなくなりました。