「やらなければいけないことがあるのに、モチベーションが上がらない」
誰にでもこのようなときがあるはず。これはセルフコントロールがしっかりできていない証拠でもあります。
セルフコントロールとは、自分で自分のモチベーションをコントロールすること。一流のビジネスパーソンやスポーツ選手は、自分の感情をうまくコントロールして感情や環境に大きく左右されることなく、つねに高いパフォーマンスを発揮できるように努めています。
言うまでもありませんが、赤ちゃんや子どものときは、誰もがセルフコントロールできないところからスタートします。赤ちゃんであれば、お腹が空いたら泣くし、子どもでも腹が立ったら物を投げつけたりしますよね。つまり、人間には、もともとはセルフコントロールできない自分しかいないわけです。
脳科学的には、社会的なセルフコントロールができるようになるのはティーンエイジャーからといわれています。つまり、16、17歳から18歳あたりで脳のセルフコントロール機能が急速に発達することがわかっています。
でも、セルフコントロールしなければ……と思ってできるものでもないですし、どんなやり方がよいかもわかりませんよね。一番シンプルなやり方は「もう1人の自分をつくること」です。
どういうことかといえば、たとえば、何かの誘惑に負けて今日はどうも仕事をやる気が起きないというとき、サボろうとする自分に対して「いや、ちゃんと仕事をしなきゃ」ともう1人の自分に注意させます。1人では足りないなら2人目、3人目と「複数の自分」をつくり、とにかく「やりたくない自分」に発破をかけるのです。
こうしたセルフコントロールの方法は、衝動的な感情の抑制にも役立ちます。それこそ、社会的に成功していて、性格もとてもおだやか、と言われているような人が、もともとは怒りっぽい性格だったということがありますよね。
これを脳科学的に分析すると、脳には思考や理性をコントロールする脳の司令塔と呼ばれる前頭葉という部位と、情動反応の処理をする扁桃体という部位があります。僕たちが感情を露わにするときは、つねに前頭葉と扁桃体がせめぎ合っています。
「本当に頭のいい人」は、同時にアニマルスピリッツが強い人(理性に偏りすぎずに革新的な挑戦をする人)でもありますから、扁桃体が優位になりがちな場合もあります。
でも、そこでぐっとセルフコントロールをする。前頭葉の働きに従う。扁桃体を中心とする感情の力学がコントロールしにくい人であればあるほど、それをおさえつけよう、コントロールしようとすることで、精神的に強くなれます。
つまり、扁桃体の働きが優位な人は、前頭葉が優位なもう1人の自分をつくるのです。そして、扁桃体のアクセルに前頭葉がブレーキをかけるようにセルフコントロールするのです。