たとえば、こんな興味深いデータがあります。あるコールセンター(アポ電話をかけて仕事を受注する)で、従業員を4名1組の同世代グループにして休憩を取らせるパターンと、4名1組の異世代混合グループにして休憩を取らせるパターンを試したところ、前者は後者より10パーセントも受注率がアップしたのです。
秘密は休憩中の雑談にあります。異世代混合グループよりも同世代グループのほうが雑談に花が咲き、話が弾むほどに相互理解も深まります。互いの人となりを知り、コミュニケーションが円滑になる。それが仕事の成果の差に直結したと考えられます。
休憩中の雑談など、勤務時間の1割にも満たないものですが、その1割未満が9割以上のパフォーマンスに影響するのが人間というものなのです。
周囲からのサポートも、共感、応援、知恵、情報なども、仕事を後押ししてくれるものはすべて、良好な人間関係から得られます。ことほどさように、組織内の人的ネットワークが豊かであるか、コミュニケーションが盛んであるかによって、成果に違いが出てくるわけです。
その意味では、今や肩身が狭くなりつつある「喫煙室」の存在意義は大きかったといえるでしょう。「タバコ」という共通項ひとつで、部署やポストを超えて雑談が交わされるというのが喫煙室の最大の効能です。昨今の嫌煙の流れにより、タバコをコーヒーなどで代替させる試みもあります。が、不思議なことに「喫煙室」を「コーヒー室」に取って代えたところで、うまく機能したという報告は聞いたことがありません。
豊かな人間関係の構築を通じて、企業の幸せな組織づくりを手伝いたい。働く人たちに幸せになってもらいたい。そう考えてきた私は、いってみれば、タバコの介在なしに「喫煙室効果」を得るソリューションを模索してきました。
こうして生まれた当社のサービスを端的に表すキーワードが、②「三角形の人間関係」、③「応援」の2つです。
組織内の人間関係は、往々にして「V字型」になりがちです。たとえば、A君という社員が、B課長、C部長それぞれの指示で仕事をしている。しかしAに仕事を指示しているB課長とC部長の間にはコミュニケーションがない……といった状況です。
このV字型人間関係の離れている点を1本の線で結んだら、どうなるでしょう。今の例でいえば、B課長とC部長がコミュニケーションを図り、A君に何をどれだけ指示しているのかを伝え合ったらどうか。
A君に負担が一気にのしかからないよう、仕事量やスケジュールの調整がなされるなど、A君がより快適に働ける環境が整うはずです。結果として、A君は指示された仕事に追いまくられることなく、みずから考え、行動する余地も生まれるでしょう。
「三角形の人間関係」とは、つまり「V字の双方が分断されていない人間関係」ということ。そして前に述べた「前向きな精神エネルギーのあふれる組織」とは、こうした「三角形の人間関係」がたくさん形成されている組織といえるのです。
その考えのもと、当社で開発したのが「応援」システムです。
仕組みはシンプルです。3人を1チームとして、毎朝、AIのキャラクターが出すお題、たとえば「今日、集中して取り組みたいことは何ですか?」などに各々が答える(宣言する)と、それを残りの2人が応援する。チームは自動的にアサインされるため、「自分が応援しなくても誰かが応援するだろう」という無責任状態は生じません。
このように3人1チームの中で「宣言」と「応援」をセットにしたコミュニケーションがとられるようにすると、必然的に「三角形の人間関係」が多く形成されます。すると社内の人間関係が良好かつ円滑になる。人的ネットワークが豊かになり、業績アップなどが期待できるのです。当サービスを導入してから、離職率が大幅にダウンした企業もあります。