社員を不幸にする組織、幸せにする組織の決定差

社員の幸福度を上げる人間関係形成術(写真:kotoru/PIXTA)
世の中が多様化し、組織のあり方も急激な見直しを迫られている。こうした中で、社員がやりがいをもって前向きに仕事に取り組み、成果を出せる「幸せな組織」は、いかにして実現可能か。
そうした課題に対し、イギリスでは、『リデザイン・ワーク 新しい働き方』の著者リンダ・グラットンが体系的なプロセスを提示している一方、日本では、その社会的課題に応えるべく、「応援」を介した組織づくりのソリューションを提供しているのが「ハピネスプラネット」だ。
代表を務める矢野和男氏は、20年以上にわたり「幸福」について研究し、アメリカをはじめ海外の研究機関や学者との交流、情報交換、共同研究を重ねてきた。その目は、新時代の組織づくりの要諦をどう捉えているのか。単に成果を求めるだけではなく、社員の幸福に寄与する組織のあるべき姿について聞いた。
 

「ラクな仕事」は個人を幸せにするか

個人の本当の幸せとは、いかにして叶うのか。幸せな組織とは、どんな組織か。大学時代にカール・ヒルティ『幸福論』を読んで衝撃を受けて以来、ずっと「幸福」について考えてきました。ここでは次の4つのキーワード――①「人的ネットワーク」、②「三角形の人間関係」、③「応援」、④「1on1+1」で、幸せな組織のあり方を考えてみたいと思います。

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当社が提供しているサービスについては後述するとして、まず「幸福」について考えてみましょう。

かつての「大量生産・大量消費」の時代では、そこそこの品質のものを、そこそこの値段で提供できれば、膨大な需要が口を開けて待っていました。これを20世紀型の働き方・企業マネジメントのモデルとすると、今、間違いなく求められているのは21世紀型モデルへのシフトです。

生活必需品がおおかた行き渡ると、今度は個々の趣味嗜好に応えるモノやサービスが求められるようになります。1つのものを大量に生産し、マスに向けて売っていればよかった時代とは違い、多様化する需要に応えるには、供給側も多様化しなくてはいけない。そこでは「上司の指示どおりに仕事をする」「昨日と同じように今日も仕事をする」という旧来の働き方は通用しません。仕事にやりがいも感じられなければ成果も出しづらいでしょう。

つまり「主体的に考え、行動する」「みずからの創造性をもって新しいことに挑戦する」ことこそが多様化する需要に応えうる21世紀型の働き方であり、そういう人をエンカレッジするのが21世紀型の企業マネジメントといえます。

このように考えてみると、「幸福」についても、1つの答えらしきものが見えてきます。誤解している人が多いかもしれませんが、「ラクな仕事」は、決して個人を幸せにはしてくれません。「ラク」は「退屈」につながり、「退屈」は「精神の荒廃」につながる。実は「ラクな仕事」ほど、個人を不幸にしかねないものはないのです。

主体的に挑戦し、みずからの力で成果を手にすること。そうありたいと志向すること。特に仕事における幸福とは、こうした前向きな精神エネルギーがあふれている状態を指します。今、マネジメント層に第一に必要なのは、この人間理解であると思います。

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ではどうしたら、そんな前向きな精神エネルギーのあふれる組織をつくれるでしょうか。

そこで挙げたいのが1つめのキーワード――リンダ・グラットン博士も『リデザイン・ワーク 新しい働き方』のなかで言及している、①「人的ネットワーク」です。