インボイス、請求書も領収書もこんなに変わる!

パソコンで仕事をする男性
フリーランスはインボイス制度にどう向き合うか悩んでいる(写真:PIXTA)

「インボイス」という言葉を聞いたことがある人は多いだろう。

昨今世間をざわつかせているのが、「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」。2023年10月1日に導入されるこの制度で、これまで消費税の納税を免除されていた「免税事業者」の多くは「課税事業者」になり、消費税を納めなければならなくなる。

納税負担が増えるだけではない。納税額を自ら計算し、確定申告をする必要があり、ほぼ何もしないでいい現状に比べたら、この手間も重くのしかかる。とくに個人事業主(フリーランス)や小規模企業の多くは免税事業者で、インボイス制度に対する抵抗はものすごい。インボイスの登録は任意だが、商取引をする一般的な事業者であれば、どうしても対応せざるをえないからだ。

個人か企業かを問わず日本の事業者は課税事業者と免税事業者に分かれる。2期前の年間売上高(消費税がかかる課税売上高)が1000万円を超えたら課税事業者だ。日本にある株式会社のほとんどが該当し、顧客から受け取った消費税を国へ納付する義務がある。

他方、年間売上高が1000万円以下のフリーランスなどの場合、免税事業者になり、消費税の納税義務はない。多くは顧客から受け取った消費税を自分の売上高、あるいは儲けと捉えていた。いわゆる“益税”と称されるものである。これを失うことは頭を悩ます問題で、インボイス制度によってまさに現実化しつつあるのだ。

正式名称は「適格請求書等保存方式」

週刊東洋経済 2023年2/4特大号[雑誌](大増税時代の渡り方)
週刊東洋経済2023年2/4特大号では「大増税時代の渡り方」を特集。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

1月30日(月)に発売した週刊東洋経済2月4日号では「大増税時代の渡り方」を特集。来るべき大増税時代に備え、インボイスから、生前贈与による節税法、NISA(少額投資非課税制度)による投資のイロハまで、さまざまな税金との向き合い方を盛り込んでいる。

インボイスを一言で説明すると、国が認めた請求書などの形式を指す。2019年以前は請求書等保存方式という名称だったが、以降は「区分記載請求書等保存方式」となり、2023年10月からは「適格請求書等保存方式」に変わる。

事業者であれば、日常的に顧客に商品やサービスを提供したとき、請求書や領収書を発行するし、仕入先からは請求書をもらうだろう。新たなルールではこの書式が従来に比べてより詳細になる。

具体的な内容は下図をご覧いただきたい。見栄えはどのようなものでも構わないが、最低限これらの項目の記載が必要になる。

大きく違うのは登録番号があるかないか

1 インボイスを発行する事業者(課税事業者)の氏名または名称

2 登録番号

3 取引年月日

4 取引内容(軽減税率対象品目がある場合はその旨を記載)

5 税抜き価格または税込み価格を税率ごとに区分した合計金額および適用税率

6 税率ごとに区分した消費税額(消費税額と地方消費税額の合計)

7 インボイスを受け取る事業者の氏名または名称

2の登録番号、5の適用税率、6の消費税額といった項目は、従来の請求書などでは見られなかった内容かもしれない。中でも登録番号が大きく変わる点だ。インボイスを税務署で登録した事業者でないと、登録番号を記載することができないためである。

なぜインボイスが必要か。例えば雑貨販売では、インボイスを仕入れ先の中小メーカーからもらえないスーパーは、消費税を納めるうえで今までより損してしまう。

というのも、インボイスでない請求書を仕入れ先から受け取った場合、仕入れ先に支払った消費税分について、消費税納税の際に控除できなくなる(差し引けなくなる)からだ。スーパーにとって、差し引けないことはその分、消費税を多く納めることになる。