「ドムドムバーガー」復活を支える3つの“意外性”

マスコットの「どむぞうくん」のぬいぐるみも、そうした文化だからこそ誕生したといえる。もともとロゴやイラストでだに使われていた「どむぞうくん」を、「ぬいぐるみにしたい」という意見が初めて店長会議で出たとき、反対意見も多かった。しかし、意見の衝突を恐れずに議論ができた結果、しっかりとアイデアが練られた商品が実現し、再販のたびにすぐに完売するほどの人気を集めるまでになっている。

どむぞうくんの多色化にも反対の声があったという。それぞれ名前があり、青は「どむクルーズ」(撮影:尾形 文繁) 

リツイートキャンペーンはやらない

3つ目は、多面的なファン作りだ。コロナ禍で外食の絶対数が減り、新規集客に頼った営業が難しくなっている。その結果、重要性を増しているのが、ブランドのファンの存在に他ならない。実際、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などが明けた後、客の戻りが早かったのはファンの多い店だ。

ドムドムハンバーガーもファンづくりには力を入れている。特にツイッターを中心としたSNSには、新商品が出たら必ず食べに行ったり、遠方から定期的に店舗を訪れたりする熱狂的なファンも多い。また、バーガー店には足を運ばないものの、同社のアパレル商品などをツイートするファンもいる。

スタジャン
「ドムドム MA-1ジャケット」(写真:尾形 文繁)

外食チェーンの中には、新商品が発売される際にハッシュタグをつけてリツイートをすると商品が当たるなどのキャンペーンをするところもあるが、同社ではこうしたことはしていない。それは、「プレゼント狙いでリツイートされる方がいるのも事実。それだと私どもの商品に興味がなくてもリツイートできてしまうため、信頼関係は築けない」(藤﨑社長)からだ。

リツイートキャンペーンに比べてSNSでのファン作りは地道な作業だが、自発的にツイートなどをしてくれるフォロワーのエンゲージメントは高いという。例えば、同社は2023年1月7日から2月26日まで「博品館TOY PARK銀座本店」の1階で期間限定のポップアップストアを開催中だ。

そこで「博品館TOY PARK」とのコラボレーションアイテムとして、博品館カラーのパープルの「どむぞうくんぬいぐるみボールチェーン」の販売を計画し、その告知を1月5日にツイッターでしたところ、4.8万人のフォロワーにもかかわらず、204.4万件のインプレッションがあり、4492件もリツイートされた。

結果として、オンラインショップでは2分程度でアイテムが完売しただけでなく、「博品館TOY PARK」のリアル店舗でも開催期間中の在庫が4日間で完売した。アパレルとの取り組みについても、ドムドム側が周知しなくてもファンが自発的に拡散してくれることが少なくないようだ。

企業とのコラボが認知度向上につながる

「ドムドムハンバーガーは、多くの店舗が町場のスーパーなどに出店しています。ですので、店舗で何かキャンペーンをやったとしてもお客様の反応は限定的。だからこそ、これまでリーチできなかった層にブランドを認知してもらうためには、企業とのコラボレーションは欠かせません。また、それを広める手段として、ツイッターやそこにいるファンの方々の存在は非常に大きいです」(藤﨑社長)

藤崎忍社長
(撮影:尾形 文繁)

同社ではツイッターを通して客の声を拾い上げ、それを営業施策や店作りなどにも生かしている。まさにファンづくりと、マーケティングの両面でツイッターの存在は欠かせないものとなっている。

会社やブランドに勢いがあるタイミングで、出店攻勢をかけるのも、飲食ビジネスを成功させる1つの定石だ。実際、藤?社長のやり方をもどかしく感じる向きもあるだろう。しかし、コロナ禍では飲食店が感染拡大の原因になっていると批難され、その存在意義が問われた。また、外食の需要が減ったことで、これまでの成功方程式が通用しなくなり、生き残るには新しい顧客との関係性づくりも欠かせなくなっている。

こうした中で、話題を集め、着実に業績を伸ばしつつあるドムドムハンバーガーはコロナ禍以降の、新たな外食店の在り方を提示しているのかもしれない。