「ドムドムバーガー」復活を支える3つの“意外性”

そこで、軸となるコンセプトを固め、それに基づき社会的意義や顧客の体験価値を重視して出店をしていくことに決めたという。

「現在、浅草花やしき店の売り上げはとても好調。結果として、私たちの取り組みをたくさんのメディアに取材していただいたおかげで、幅広い世代の方に興味を持ってもらえました。そうした反響があったのも売り上げありきではなく、意義ありきで出店を考えたからだと思っています」(藤?社長)

同社はまた、2021年3月に千葉県にある「市原ぞうの国」にも出店。「ぞう」が縁だとしているが、コロナ禍で多くのテーマパークなどが苦戦を仕入れる中での出店はまさに従来の外食の出店戦略とは異なるが、ここでも出店することの意義を重視したとしている。

藤崎忍社長
コロナ禍中に「花やしき店」の出店を決めた藤?社長(撮影:尾形 文繁)

2つ目が、「社内の風通しのよさ」である。ドムドムハンバーガーといったら、「丸ごと!!カニバーガー」などの個性的なメニューを思い浮かべる方も多いだろう。その背景にあるのが、社員が積極的に提案をしやすい環境だ。

そもそも同社の東京オフィスには藤﨑社長をはじめ、取締役営業部部長、商品開発担当者、広報マーケティング担当者、営業サポートなど、7人しか常駐していないため、直接社長と顔を合わせる機会が多い。加えて、藤﨑社長がオープンな性格ということもあり、コミュニケーションが取りやすい環境が整っている。

かりんとう饅頭
花やしき店のみで販売する「どむぞうくん焼印入り かりんとう饅頭」(撮影:尾形 文繁)

2022年は18種類の新商品を投入

そうしたメリットが特に現れているのがメニュー開発だ。

藤?社長によると、同社ではメニュー開発者に対して「おいしい」ことは大前提に、その上で付加価値の高い商品を開発して欲しいと要請しており、それに則っている限り、提案されたメニューを否定することはない。担当者が自由にメニューを開発できる環境づくりに力を入れていると言い、新商品の試食は月に2、3回に及ぶ。取材した日も新メニュー案の試食を控えていた。

「そういった方向性を共有しているので、担当者とのコミュニケーションはとてもスムーズ。時には意見が分かれることがありますが、目指す方向性は同じなので、徹底的に議論しながらさらに面白いアイデアに昇華させることもできます」(藤?社長)

試食と議論を繰り返してリリースされた新商品は、2022年は毎月ごとの新作が計12種と、コラボハンバーガーが6種類で、18商品あった。また、付加価値やユニークな視点を重視したメニュー作りに力を入れた結果、『丸ごと!!カニバーガー』などの商品が生まれた。

カニバーガー
今も人気が高い「丸ごと!!カニバーガー」(撮影:尾形 文繁)

同バーガーは2019年にリリースされるや否や、3カ月分の在庫が1カ月で売り切れるほどの大ヒットを記録。その大ヒットを受けて20年に再販すると、今後は1カ月分の在庫が1週間で完売した。この他にも、店舗によっては『丸ごと!!カニバーガー』だけで250個以上販売したり、売り上げが120~150%底上げされたりと、さまざまな記録を打ち立てている。

「丸ごと!!カニバーガーは冷凍のカニを各店舗に送って、冷水解凍してから衣を付けて店舗の厨房で揚げているので、店舗スタッフにオペレーションの負荷がかかります。他のハンバーガーチェーンではまずやらないでしょう。しかし、当社の場合、これまで数多くのヒット商品を世に出してきたメニュー開発の担当者を、店舗スタッフが信頼しているので実現できます」(藤?社長)

「言いたいことが言える」「疑問を口に出すことができる」といった風通しがいい環境がドムドムハンバーガーの価値創造を促進させているのではないか。