ピンチに超強い人、すぐ折れる人、その決定的違い

微笑む女性
トラブル時ほどその人の本質が現れる(写真:Hanna/PIXTA)
ここ最近の心理学のトレンドは人間の「自分をだます能力=自己欺瞞」である。メディアでも話題になり、人間の脳がいかに「自分をあざむく」ようにできているかが白日の下にさらされてきた。
そもそも人間は自分のミスを認めるのが下手である。自分が間違ったことをしでかしても、相手に謝るどころか、ミスなどなかったかのように自分を正当化する。
「自分は正しいことをした、間違っているのはおまえのほうだ」と言い募る人がいるのも、人間の自然な心の働きだとすれば納得だ。
自分にうそをつくことには心を平安に保つという利点もあるが、正しい判断ができなくなるという大きな欠点がある。
全米でロングセラーになっている『マッピング思考:人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」』の著者ジュリア・ガレフは、「自分をだます」ことに頼らない発展的なアプローチを提案している。そのキーワードは、「誠実さ」である。
 

人間には、自分にうそをつく習性がある

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人間には「基本的にすべてはうまくいっている」と感じたいという基本的な欲求がある。「自分は人生に失敗していなし、世界は恐ろしい場所ではないし、どんなことが起ころうともなんとか切り抜けられるはずだ」と思いたいのだ。

日常生活において、気分や自尊心を脅かされることは頻繁にある。独立して事業がうまくいっていないと、「会社をやめたのは間違いだった?」といった不安が脳裏をよぎることもあれば、上司に反論したときに「彼を怒らせてしまったかもしれない」と他人に直接批判されることもある。難しい選択を迫られることもあれば、何かに失敗することもある。

そのとき、私たちはネガティブな感情を抑えるために「コーピング(ストレスへの意図的な対処策)」と呼ばれる行動をとろうとする。一般的に、コーピングには「自己をだます(自分にうそをつく)」ことが必要だと考えられている。

『なぜあの人はあやまちを認めないのか』(河出書房新社)の著者である、心理学者のキャロル・タヴリスとエリオット・アロンソンは、人が心を健全に保つためには、ある程度の自己正当化が必要であると述べている。

「自己正当化をしなければ、私たちは不愉快な気分を引きずってしまう。『あの道を選んでおけばよかった』『なぜものごとをうまくできないのだろう』といった後悔で自分を苦しめてしまうのだ」

しかし「後悔で自分を苦しめる」ことを防ぐために、本当に自己正当化が必要なのだろうか? 後悔で自分を苦しめない方法を学ぶことはできないのか?

行動しやすいカンタンな計画を立ててみる

人間はすぐに希望的観測に逃げ込み、自分の偏見や信条を肯定するような証拠だけを見つけようとする。いわゆる「自己欺瞞」である。確かに、私たちはミスをしたときに都合よく言い訳をしようとする。

その一方で、ミスを認めるときがあるのも事実である。肝心なときに自分の誤った考えを正そうとしないことは多いが、まったく変えないわけでもない。

人間は複雑な生き物だ。真実から目を背けることも多いが、正面から向き合うこともある。

過去30年間『自分をだます/自己欺瞞の隠された力』といったタイトルに代表される記事や書籍が、数々出版されてきた。これらは「人は、自分自身や自分の人生に対して?ポジティブなイメージ?を持つことで心の健康を保てる」という、心理学の主張にもとづいて書かれたものだ。