上手に人をほめるというのも、なかなか難しいものです。
せっかくほめたのに相手が喜んでくれない、それどころか不機嫌になってしまう場合もあります。ほめ方にも「損するほめ方」と「得するほめ方」があります。
例えば、会社でのこんな場面。
「先輩、あの交渉うまくいったんですか?」
「ああ、おかげで契約とれたよ」
「さすがですね。先輩って、ほんと営業のセンスがありますよね」
「……」
このほめ方は損しています。
失敗のポイントは「上から目線」。職場の後輩が先輩の営業センスをほめるのは、メジャーリーガーの大谷翔平に向かって「キミ、野球うまいね」とほめるようなものです。プロはその道の技術に優れているのは当然。それを「うまいね」とほめるのは、上の立場からジャッジしているわけで、「そういうお前は何様なんだ」となってしまいます。
では、得するほめ方とはどんなほめ方でしょうか?
先輩に対して「さすがですね、先輩。マジですごいっす!」とでも言えば、先輩は「こいつ、ボキャブラリーが乏しいな」「見え透いたお世辞言うなあ」と感じるかもしれませんが、少なくともイヤな気持ちにはならないでしょう。
なぜなら、「マジですごいっす!」は上からの冷静なジャッジではなく、後輩が純粋に感じた「気持ち」だからです。
うまいかどうか、営業のセンスがあるかどうか、仕事ができるかどうか、については、それを語れる立場かどうかが問題になります。
一方、感じたことは誰でも語る資格がある。だから「マジですごいっす!」はOKなのです。
歌手に対して「歌がうまいですね」とほめたり、プロのイラストレーターに対して「いい絵ですね」などとほめたりするのは「バカにしているのか」と思われかねません。それは、言葉のなかに「いい/悪い」という上から目線の「評価」「判断」「ジャッジ」が混ざっているからです。こうした「評価言葉」には要注意です。
そういうときは、素直に「感動しました!」など、思ったことをストレートに表現するほうが相手には喜ばれるはずです。
ですから、「いい/悪い」より「好き/嫌い」で評価するほうが得をします。
よく「あの映画、観に行ったほうがいいよ」「あのラーメン、食べておくといいよ」などと「いい」を使いがちな人がいます。そこには、上から目線の「評価」や「アドバイス」が垣間見えます。
そうではなく「あの映画、おもしろかったよ」「あのラーメン、ぼくは好きだな」といったピュアな話し方のほうが相手に不快感を与えません。
ちょっとしたことですが、ぜひ意識してみてください。