最大のポイントは、上司がよかれと思ってしゃべっていることをしっかりと「承認してあげる」こと。プライドを傷つけず、顔を立てたうえで、「会議を進めたいので、ご協力ください」という気持ちを伝えることです。
ファシリテーターに、この手法を伝授し、上司の独演会を止めることができれば、会議時間が短くなるだけでなく、たとえばオンライン会議では、発言者の数が1.2倍から1.3倍に増えるという結果も出ています。
部下にとって厄介な上司は、「ジャイアン上司」だけではありません。
例えば、こんな上司はいませんか?
「今日は、なんでも自由にアイデアを出してほしい」
会議の冒頭でニコニコとそう言っていた司会役の上司。
そう言われて、その言葉を真に受けた社員の1人がアイデアを出してみると、案の定手のひら返し。
「本当にそんなことできると思う? ちゃんと考えて発言してくれないかな」
「この意見に賛成の人なんて、このなかにいるの?」
意見を全否定されてメッタ打ちに!
そんな姿を見せられたら、とてもではありませんが、次に手を挙げる勇気は出ませんよね。
あなたも、ほかの参加者も、当然のごとく、それ以降は、誰も発言しなくなるでしょう。運悪く、自分の意見以外は認めるつもりのない「俺リスペクト上司」に当たってしまったのかもしれません。
会議で沈黙が3秒続くと恐怖に変わり、その場にいること自体がつらくなっていきます。早くデスクに戻って自分の仕事をしたいのに、この時間はいったい何? 何の苦行なの?
そんな事態は、絶対に避けたいですよね。
まず前提として、会議は、その目的によって3種類に分けられることを覚えおきましょう。
その3種類と会議全体での比率は次のとおり。
多くの企業が、「アイデア出し会議」と「決定のための会議」を同時にやってしまうので、アイデアを出した人がメッタ打ちになるというような、理不尽な事態が発生するのです。
「この会議は、3つのうち、どの会議なのか?」と、それをはっきりさせて会議に臨むだけで、会議時間は11%短くなります。
アイデア会議では「出た意見を否定しない」、決定会議では「出された意見や討議から、最後は決定者が決定する」という原則を守ることで、不毛な時間が削減されるのですね。
なお、「決定者が複数集まる決定会議」では、多数決で決めるのか、費用対効果で決めるのかなど、「決定方法」を先に決めると会議が迷走しません。
「アイデア出し会議なのに人の意見を否定する人」が現れないようにするには、会議の開催にあたって、ファシリテーター(仕切り役)が、「今日の会議はアイデア出しが目的です。ゴールは決定ではなくてアイデアの量ですので、みなさん、出た意見を否定するのはNGでお願いします」と宣言することです。
ファシリテーターがいないなら、「この会議はアイデアをたくさん出すことが目的だと思いますので、ハードルを下げるために、実現可能性を考えずにアイデアを出しますね」と、あなたが先陣を切ってもよいです。
最初に宣言してしまえば、心理的なハードルも下がります。会議の参加者も、場の空気を和らげてくれたあなたに感謝すると思います。
先述したような会議は、どこの会社でも起こりうる「あるある」だと思います。
また、「ジャイアン上司」「俺リスペクト上司」もどこの会社にも「いるいる」ではないでしょうか。
こうした会議に共通する問題点は「心理的安全性」が確保されていないことです。出席者が自由に発言できないため、会議の中身はスカスカ、出席者にとってその場にいる意味がない「ムダな時間」になってしまいます。