この醸造所を訪れる人たちは、複数のワインを試飲した上で、購入するワインを決めます。「お客は試飲できるワイン9種の名前と値段を紙1枚に書いたリストを渡される。値段は8ドルから60ドルまでさまざま」です。
ウリとアイェレットが値付けをするのは、人気商品である2005年のカルベネ・ソーヴィニヨンで、リストの7番目です。これまで10ドルで売られていました。
ウリとアイェレットが行った実験は、数週間にわたって、「10ドル、20ドル、40ドルと」、日によって値段を変えるというものでした。
例えば毎週月曜日だけ値段を変えるといったやり方では、実験になりません。平日と休日ではそもそも来店する顧客層が異なり、バイアスがかかる可能性があるからです。ランダムに日を選び、値段を変えることで、バイアスを排除した実験を可能にしたのです。
結果は意外なものでした。「カルベネは10ドルにしたときよりも20ドルにしたときのほうが50%もたくさん売れたのだ!」。醸造所の経営者は、喜んで値段を20ドルに変えたということです。
このように、中小企業であっても、1店舗しか持たない企業であっても、ほとんどコストをかけずに、フィールド実験を行うことができます。実際にやってみて初めてわかることはたくさんあります。この新しい発見こそが、フィールド実験の面白さです。
この記事を読んでくださっている方たちも、日々の仕事の中で、「これは本当に効果があるのか?」「上司から指示されたが、やる意味があるんだろうか?」と悩む場面があるのではないかと思います。
その時に、ほんの少しだけ手間と時間をかけて実験を準備し、自分の裁量の範囲で実行すれば、「やるか、やらないか」について明確な根拠を持って意思決定できます。