日本人も驚く「日本代表」カタールでの大人気ぶり

すでに試合内容については多くの読者がご存じだとは思いますが、本日24時にキックオフするクロアチア戦の雰囲気の「予習」になるかもしれませんので、僕の観戦記録を少し共有できれば、と思います。ただし、サッカーの専門家ではなく、あくまで、一旅行作家の記録として受け止めていただければと思います。

スペイン戦では、試合開始1時間前にもなると、スタジアム内は観客でほぼ埋め尽くされました。最初の盛り上がりは、選手入場、続いてはスタメン発表です。この時点でのチームへの声援は日本のほうが多い印象。しかしながら、スペイン代表のガビ選手のスタメンが発表された時は、それまでで1番の盛り上がりを見せました。

開始直後は、日本サポーターの方が優勢に感じます。大きな声、手拍子、きっと選手にも届いていることでしょう。しかしながら、スペインは開始早々、前半11分にモラタのシュートで先制。すると、それまで眠っていたのではないか?と感じるほどの大観衆の声がスタジアムにこだまします。サッカー初心者としては、「これが常勝チーム、そしてサポーターの貫禄か」と思わずにはいられませんでした。

その後は膠着状態が続き、体感としては、選手に声援は届いているものの、静まり返ったスタジアム。そんな静けさを打ち破ったのは、両チームの選手ではなく、スペインサポーターでした。試合展開が退屈だと言わんばかりの、大きなウェーブがスペインサポーターから巻き起こります。選手たちへの声援というよりは、「試合が退屈なら、スタジアムの観客だけで楽しもう」という意思を感じるほど、盛り上がるウェーブ。それも1周だけでなく、何周も。

結局、前半はそのまま終了しましたが、後半3分に堂安律選手がゴール!すると、スタジアムの雰囲気は前半の落ち着いた感じから、最高潮に!それまで試合展開退屈していた、日本でもスペインでもないサッカーファンたちまで、喜びが爆発させます。この瞬間、もはやアウェイのような雰囲気だったカタールのカリファ国際スタジアムが、日本の完全ホームに変わりました。

そして、スペインを打ち負かすことになる、三笘選手の奇跡の折り返し"からの田中碧選手の後半6分の逆転ゴール。ゴールがネットを揺らした瞬間は、会場は熱狂に包まれました。スタジアムからだと、三笘選手の折り返しが出ていたかどうかまではまったくわからず、それがゴールだと、スペインサポーター以外は信じている盛り上がり方でした。

そして、運命のVAR。最初は何が起こっているのかわからず、スタジアムがどよめいていましたが、大型ビジョンにリプレイが放送されると、状況を理解したサポーターたちは静まり返り、その時を待ちます。サポーターたちがが固唾をのんで見守る中、主審がゴールを告げると、スタジアムの興奮は爆発。それは日本人だけではなく、日本代表を信じた外国人サポーターもです。

スタジアムの大型ビジョンに、ドイツーコスタリカ戦の経過が定期的に映し出され、一時的な一喜一憂はあるものの、そこからは完全に日本代表への応援モード。そして、永遠にも感じたアディショナルタイムを経て、運命の瞬間が訪れます。見事日本代表がスペイン代表を撃破するという、本大会2度目のジャイアントキリングを収めてくれたのでした。

試合翌日でも日本代表への賛辞はやまず

試合終了後は、ピッチの外ではすれ違う外国の方の「おめでとう」の嵐が待っていて、なかなか前には進めません。ハイタッチやハグを求めてくれる方もいれば、ユニフォームを交換したいと言われる方には何人も出会しました。

筆者とスペイン代表のサポーター(写真:筆者提供)

さらには試合翌日以降になっても、日本代表への賛辞は止まりません。「日本おめでとう」と声をかけてくれたのは、ホテルスタッフ、タクシーやUberの運転手、レストランの店員、世界各国のサッカーファン、そして空港の入国審査官まで。同行した僕の後輩は、日本代表のユニフォームを着ていただけで、日本への帰国の飛行機の搭乗時に、カタール航空のスタッフからプライオリティーレーンに通されていました。

そして、滞在した数日間の中だけでも、現地での日本への期待は遥かに高くなったと感じます。声をかけてくれる世界各国のサッカーファンは、クロアチアに勝利するのは当然で、ブラジルをも一泡吹かせてくれるのではという、W杯開催前には考えられなかった期待を口にする人にも何人も会いしました。

しかし、われわれサポーターが落ち着く暇はありません。勝てば日本悲願のベスト8が決まる、運命のクロアチア戦。僕は平日は会社員につき、月曜からは通常の業務が待っており、泣く泣く帰国して日本からの応援になりますが、カタールに向けて日本からの声援を届けたいと思います。