YouTubeにテレビ並みの番組がやたら増えた理由

ショートに特化したクリエイターは今後も増えることが予測されますが、「ひみつ基地。」のようにストーリーがあることも登録者増加のためには大切となってくるでしょう。

番組型動画とYouTubeショートの関連性も

また、番組型動画が増えた背景にも、YouTubeショートとの関連性があります。

クリエイター動画と同じかそれ以上に再生されているショート動画は切り抜き動画です。切り抜き動画はテレビ番組やドラマ、VTuberの生配信などさまざまな動画を要約して1分弱にまとめたものですが、タイムパフォーマンスを意識しているZ世代を中心に切り抜き動画は視聴されています。

いきなり長尺の動画や生配信を見るのはハードルが高いですが、切り抜き動画で興味を持ち、実際の動画を視聴する流れは主流となってきています。切り抜き動画がPRの役割を果たしてくれるため、切り抜きを推奨しているVTuberやYouTuberも数多くいます。

YouTubeのコンテンツでは番組型動画や言論系の討論動画、VTuber生配信などは切り抜きと相性が良く、ショートはもちろんTikTokでもよく回っています。切り抜き動画の視聴回数がYouTubeトレンドに与える影響はかなり大きいのではないかと思われます。

切り抜きと親和性のあるVTuber「にじさんじ」を運営するANYCOLOR株式会社は今年5月に上場を果たしました。時価総額1652億円となり、VTuberという文化の揺るぎない地位を見せた出来事です。

また、にじさんじ所属の「壱百満天原サロメ」がチャンネル開設から14日で100万登録者を突破。これはVTuberでは史上最速の記録となり、VTuber人気が高まっていることがうかがえます。にじさんじは公式から切り抜きのルールを定めており、悪意ある切り抜きを禁止するなど、ルールを制定したうえで切り抜きの文化を作っています。

今年7月に行われた参議院選挙の影響で言論系のYouTubeコンテンツにも注目が集まりました。成田悠輔やひろゆき、岡田斗司夫などYouTubeを通して社会的な言論や批評を行っている切り抜きも人気となりました。ヒカルも「賛否両論!!」という討論番組を立ち上げるなど、不安定になっていく社会経済の中で、忌憚ない発言をするオピニオンリーダーの需要は高まると思われます。

TikTokやテレビの良さがYouTubeに集約し始めている

これらの今年のトレンドから、今のYouTubeはショート動画の人気やテレビディレクターのYouTubeへの移行など、あらゆる動画コンテンツの良い部分が集約し始め、プラットフォームとしてさらに進化をしていると考えています。

今後、30分~1時間尺の番組型コンテンツと、それらの切り抜き動画、ショート単体のコンテンツも増えていくと考えられます。

また、今年7月ECサイトプラットフォーム・ShopifyとYouTubeが提携し、YouTubeのプラットフォーム上でショッピングが完結する新機能「YouTubeショッピング」の機能追加が発表されました。この機能が実装されると、ショート動画や生配信でShopify上の商品を購入することが可能になります。それによりますますプラットフォームの利便性が強化され、さらなるYouTubeでの番組の可能性が見出されていきそうです。

YouTubeトレンドは2023年も刻一刻と進化していきそうです。

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